コンセプトワークを進めてみよう
こんにちは。
マーケティング視点で読解力を高めるノートでは、小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛けがわかると題し、デジタルネイティブ時代の情報発信を主たるテーマとし、中小企業や個人事業主がオンラインチャネルを活用する際の前提となる、情報接触態様の変化を読み解き、IDやSNS、そして口コミを科学して理解するノートをお届けしてまいります。
1.言語化、形式化のコツ
本節では、ファン増やすための取り組みの下準備として、自社及び商品を改めて理解するワークと、共感型マーケティング活用コンセプトを言語化、形式化するワークを皆さんと一緒に進めてまいります。
私がファシリテーターとしてご支援した、SNSを活用して自社および商品のブランディングを行うための研究会では、自社及び商品を改めて理解するワーク(演習)は、ワークシートをお持ち帰り頂いて宿題とし、次回までに書き入れて頂いたシートを印刷し、参加する皆様に御配りする形で、情報を交換しています。
研究会に参加された方から、当方に寄せられる感想や、ご質問には、以下のようなものがあります。
いざ、ワークシートに相対してみると、商品を構成する魅力や商品価値の源泉である時間をかけて取り組んでいることや、譲れないこだわり、商品が持つ効用や提供価値を言語化、形式化するのは、案外に難しい、ということがわかります。
また、「それは当然のこと」、「当たり前すぎる」、「意識してやっていない」という、当事者だからこそ見えないものに、他社とは異なる固有の価値が認められることが多いのですが、当事者にとって当たり前すぎると、敢えて言語化するほどのことではない、と思いがちだったりするので、ワークシートに向き合うと、書き出すのって難しい、と感じることが多いようです。
そこで、自社及び商品を改めて理解するワークで、言語化、形式化のための作業に行き詰ったり、もやもやしてしまった時に、私がお勧めしているの方法がありますので、以下の図表をご覧ください。
もし、商品作りや製品化、農産物の栽培にかける想いを、うまく言語に換えられないときは、「なぜを3回」または「どうしてを3回」、ご自身に対して問いかけてみてください。
なぜ、この商品を製品化しようと思ったのか?(なぜ、どうしての1回目)、各企業でことなる理由があると思います。続いて、その理由が生まれたのはどうしてなんだろう、(なぜ、どうしての2回目)。そして、出てきた内なる答えに対して、もう一度、その理由を尋ねてみてください。
当然、理由は分岐し、いくつも出てくることがあると思いますが、それぞれの理由、回答に対して、質問してくださる方がいるお気持ちで、対話形式のように、なぜ、どうして?と問いかけて頂きます。
3回目の回答は、心の奥底にある真因(芯を食った答え)であり、商品を届けるモチベーションの源泉や、「志」、「使命」、「こだわり」、「ゆずれない想い」が言語化された状態になっているはずです
なぜを3回、どうしてを3回繰り返すことで、通常、目に触れるものではない、無形の経営資源を言語に換え、表現することが容易になりますので、皆さんも、次項のワークにチャレンジして頂く際、お試しいただければ、幸いです。
2.自社の商品について一段掘り下げて理解するステップ
それでは、実際に自社及び商品を改めて理解するワーク(演習)に取り組んでみましょう。非常に簡単なワークシートですが、演習用のフレームを用意いたしましたので、以下の図表を参考に、言語化、形式化にチャレンジしていただければと思います。
前節でご紹介した通り、「無形資源」である自社の志、こだわり点と「事業機会」である、お客様の変化やライフスタイル、食品に対する期待感を掛け合わせ(クロスさせる)、自社が提供できる価値とお客様の期待が交差する箇所を探すことが、目的になるため、上記の図表にあるW:とT:の部分は、割愛していただいても構いません。
上記図の図表の左上、S:の部分は、例えば、以下の内容を書き入れ、言語化を進めていきます。
今回は、紙面を使ったワークショップになりますので、研究会やセミナー形式のように、他社の発表を聞くことができないのですが、S:欄における他社のまとめかた、O:欄での顧客理解の仕方、については私がご支援した食品クラスタが参加しているものとして、言語化、形式化した内容をご紹介いたしますので、他社の工夫として、参考にご覧いただければと思います。
食品クラスタの中で、生姜の加工食品を製造されている事業者がS:欄で表現する「自社の志・こだわり点」は、例えば以下のような内容になります。
この事業者のS:欄を確認すると、共感を得たい、あるいはファンになって頂きたいお客様像や、お客様を表すキーワードは、かなり絞られ、明確になってくることがわかります。
単に生姜の加工品、という商品から思い浮かぶターゲットは幅広になってしまうのですが、使命や提供価値、そもそもの想いにフォーカスすることで、「冷え性でお悩みの女性」に対し、「栄養価の高い食品」を提供することが使命であり、全国に美味しい(幸せ)を届け、召し上がる方の健やかな生き方をご支援するという、当社固有の事業価値(存在意義)が明確になりました。
続いてO:欄で表現する「お客様の変化、ライフスタイル、価値感の変化」を見ていきます。
日本では、どれくらいの方が冷え性でお悩みなんでしょうか?リンナイ株式会社が実施した「冬場の冷えと暖房事情」に関する意識調査を参考に読み解いてみたいと思います。
こちらの調査結果からは、女性の約8割が冷え性で、お困りだということがわかります。特に20代の女性は約4割が、「とてもそう思う」と回答し、あわせて、風邪をひきやすい体質(免疫力が低い)の方が多いという傾向が見えてまいりました。
冷え性の方は、おなかを触ると冷たいと言われています。身体の中心から温めることは冷え性改善のために大切だと言われています。
しょうがには身体を温める働きがあります。しょうがもつポカポカのパワーを活用し、食事を通じて身体の中心から温めようとする場合、もっとも重要なのは体温のリズムを整える朝食だということがわかっています。ご興味がある方は、テルモ体温研究所の記事をご覧ください。
冷え性に関する調査結果と、冷え性を解消するために重要な朝食の存在、そして、しょうが持つ効用を組み合わせから見えてみた、お客様の変化、ライフスタイル、価値感の変化は、以下のような内容になります。
生姜の加工食品を扱う事業者の事例をご覧頂き、S:欄とO:欄を掛け合わせることで、事業が提供する固有の事業価値と、お客様の期待がクロスし、重なる部分が見えてきたのではないでしょうか?
また、皆さんがご自身で書き出したワークシートにおいても、同様に、事業者としての使命やこだわり、内に秘めた想いと、お客様のライフスタイルや価値観の変化、顕在化しているニーズを掛け合わせ、重なった部分が、ファンを作るための第1歩としてまとめる、オリジナルのコンセプトになりますので、どのような重なりがあったか、ご確認いただければと思います。
ちなみにですが、私が事例企業のお話を伺い、固有の事業価値とお客様の期待(ニーズ)から導出したオリジナルコンセプトは、「温活朝食の提案と発信」でした。こちらの説明は、次節のコンセプトワークを通じ、ご紹介してまいります。
3.ファン作りのためのオリジナルコンセプトを策定する
それでは、実際のワークシートを使い、共感型マーケティングの活用コンセプトを整理(演習)していきましょう。演習用のフレームを用意いたしましたので、以下の図表を参考に、皆様にも言語化、形式化にチャレンジしていただければと思います。
前節でご説明いたしましたが、共感型マーケティング活用のためのコンセプト作りは3つの作業(言語化、形式化)から成り立っています。
まずは、何を:自社の価値定義の明文化を行います。私たちは何を為すために存在する企業なのか、そして、だからこそ、伝えるべきことは何かを規定するための言語化、形式化です。
事例企業の「自社の志・こだわり点」で整理した内容に基づいて、事業価値を定義すると、以下のような形になるのではないでしょうか?
続いて、お客様の変化、ライフスタイル、価値感の変化から、誰に:自社の価値を知らしめたい対象者を規定します。どのような課題を持ち、効用を求めている生活者をターゲットに据えるのかを定義するための言語化、形式化のワークです。
共感いただき、ファンになってもらいたいターゲット像を定義すると、以下のような方になるのではないでしょうか?
最後に、どのように:取り組もうとすることを整理いたします。「何を」と「誰に」の内容を前提とし、発信するコンテンツに合わせたSNSやオンラインチャネルのサービスを決め、少々細かいようですが、SNSのサービスの特性を生かしたコンテンツを企画し、継続的に発信するための体制や役割、情報発信時に世界観を一定に保つための独自のルール等を大まかに規定するためのワークです。
まず、事例企業の情報発信の主たるテーマとなる「温活朝食」と、共感いただき、ファンになってもらいたいターゲット像を勘案し、情報伝達に適したSNSはなんでしょうか?
私は、Instagramを推薦したいと思います。生姜を用いた温活朝食を提案するとした場合、お忙しい朝の時間であっても、時短で簡便な献立や、生姜の商品をを用いた「チョイ足し」を説明するのに適した方法は、ビジュアルでの訴求だと思います。
例えばですが、レンジで温めるおかゆに、生姜の佃煮を載せるだけで、体を温める十分な効果が期待できることを、あたたかな湯気が立ち上る雰囲気とともにビジュアル(写真画像)付きで、発信することができるからです。
情報発信時の世界観は、一貫して「温活朝食」を提案することになるでしょう。「#」ハッシュタグを活用し、「#温活朝食」や、「#温活女子」、「#慌ただしくても朝食」、「#ちょい足しで温活」、という形で、主たるターゲットに対し、手間入らずで、朝の慌ただしい時間であっても、朝食を摂って、身体を内側から温めることを提案するアカウントである、というポジションを明確に規定します。
「#」ハッシュタグや、Instagramのテキスト欄では、日々忙しくされている20代女性が、温活朝食を摂って、身体を温め、健やかな毎日が送れますように、という願いを込めたメッセージを付与して発信することで、共感した方が、同じハッシュタグを付与し、自身のフォロワーへ共有する、という情報伝播が期待できます。
温活朝食の提案を通じ、身体を内側から温める効果を持った美味しい幸せ、というメッセージに載せた、事例企業のブランドや商品の存在を広く知らしめていく取り組みが、今回のワークを通じて整理した、共感型マーケティングの活用コンセプトになりそうです。
第7章(3)コンセプトをワークを進めてみよう、では、実在の食品クラスタを取り上げ、コンセプトワークの参考例としてご紹介するとともに、自社の商品について一段掘り下げて理解するワークと、活用コンセプトを整理するワークについて、ご案内してまいりました。
第7章(4)コミュニケーションの仕組みと仕掛けを考える、として、実在の食品クラスタの発信事例に基づき、予め気を付けて頂きたい情報発信時の留意点や、効果を高める工夫や仕掛けもご紹介し、ファンづくりの第1歩目を
スムーズに踏み出すための、お手伝いをさせて頂きます。
ここまで、ご一読いただきありがとうございます。マーケティング視点で読解力を高めるノートでまとめた電子書籍のコンテンツも、ご覧いただけたら、幸いです。
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