DXの目的と意味意義の解釈
こんにちは。マーケティングの視点で読解力を高めるためのノートです。
本連載では、「デジタル思考とデータドリブン・マーケティング」というテーマに焦点を当て、アナログとデジタルの判断の違いやデータの特性や活用上の課題、DXを推進するために必要な考え方やステップなど、ますます求められるファクトベースの変革について考えてみたいと思います。
変化量が多く、変化のスピードが速い時代には、お客さんが求めているものと、企業が提供する商品やサービスの価値との間にズレ(不一致)が生じやすくなります。立ち止まっていると、そのズレはさらに拡大してしまいます。
お客さまの期待値と商品やサービスの提供価値のズレを埋めるための取り組みを行う際、必要なことは、羅針盤を持ち、改善の方向性を見定めることや、良否を判定するための物差しを持っておくことです。
何でもかんでも、手当たり次第にやみくもに変えようとすると、あらぬ方向に進んでしまい、課題解決に着手する前よりも、実施後の方がむしろズレが拡大してしまう可能性があるため、100%の成果を求めるよりも、ある一定の目標に近づけるための設計が求められます。
今回は、DX(デジタルトランスフォーメーション)という表現を分解し、その目的や意味合いと合わせ、施策を適切に実施するための羅針盤や物差しの存在について、考えてみたいと思います。
1.ズレが発生する原因(アナログ)
従前の日本の事業会社における意思決定は、定性的な判断、判定が多く、大勢を占めていました。どなたかの過去の経験に基づいたり、特定の人の考え方に拠った属人的な判定がされる等、定性的な情報に基づく意思決定に頼りがちな傾向にありました。
このような判断判定であっても、それほど大きな齟齬はなく、大過なく過ごせてこれたのは、変化量や判断のための変数が少ない時代は、過去からの傾向がそれほど変わらず、前年までを踏襲した取り組みであっても、十分に対応できたためだと考えられます
以下は、従前の意思決定の特徴的なスタイルの表現です:
おそらくこうだろう
過去のやり方ではこうだったから、今も同じだろう
きっとこの先こうなるはず
バクっと
えいや、で決めちゃう
このような判断判定の方法は、定性的な情報に基づく「アナログ」なスタイルだと言えます。
2.ズレを縮める考え方(デジタル)
私たちがビジネスに取り組む現代は、変化量が大きく、変化のスピードが速く、複雑なビジネス構造や多様なステークホルダーに囲まれています。このような状況下では、従来のように、画一的かつ断定的である「アナログ」なスタイルでは対応できないことが多くなっています。
代わりに、変化の兆しを単一、単独のデータだけで測るのではなく、複合的なデータとその掛け合わせによる「ファクト」に根拠を見出す等、多面的に読み解いた上での判断判定が求められます。
現代に求められる意思決定のスタイルは以下のような形です:
事実に基づく
変化の兆しを知る
変化の大きさや方向を見る
メカニズムを知る
確からしいものを選び取る
これからの意思決定は、勘や個人の感覚に頼るのではなく、定量的な材料に基づく「デジタル」なスタイルで行われる必要があると考えられます。
3.DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)の本来的な目的は、小さい事でも、事実に基づくアクションを取ることによって「顧客に提供する新たな価値」を見出すことにあります。
手段としてのDXは、顧客価値を提供するために、事実に基づいて変革するためのアクションやプロセスです。そして、DXの主体はファクトに基づく判断や判定を行う「デジタル思考」を備えた社員です。
DXについては、施策のデジタル化やデジタルツールの導入と混同されることがありますが、実際にはアウトプットがアナログでも、変革のプロセスや取り組むメンバーがデジタル思考であれば、その取り組みはDXと言えるのです。
一層突き詰めると、DXとは、単にアプリやデジタルプラットフォームを構築することではなく、事実に基づく判断や変革のアクションを起こすために必要なデジタル思考を備えた人材の育成と、デジタル思考の取組みが日々実行される組織文化の定着と浸透に関するアクションであると言えるのではないでしょうか。
次回は、デジタルな意思決定やデジタル思考のアクションを採る際の羅針盤や物差しであり、判断判定の根拠となるデータ活用の課題(種類)について考えてみたいと思います。
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