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リテールメディアの実像:その本質は物販ECサイト内広告にあり
こんにちは。マーケティング視点で読解力を高めるノートです。
今回は、直近で米国企業のマーケターの1/3以上(38%)が利用するまでに成長したリテールメディアの現在地についてみていきたいと思います。
リテールメディアと呼ばれる媒体は様々なものがありますが、現在のリテールメディア広告とは何を指しているのか、米国の事例をもとに考えます。
1.米国における活用実態
GlossyのCMO戦略シリーズのためにリテールメディアを取り上げたGlossy+リサーチの最近のレポートによると、2023年現在、リテールメディアの活用率は、ソーシャルメディア、ディスプレイ広告に次いで3位となっており、米国のマーケターにとって、広告媒体を選択する際のスタメンの仲間入りを果たしているようです。
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2.リテールメディア広告費の投下先
先述したリサーチの結果によると、マーケターの4人に3人(76%)がAmazon Adsを利用していると回答しており、4人に1人(24%)がWalmart connectを最近利用したと回答しています。
Amazonは、多くの消費者データを所有しているだけでなく、物販ECプラットフォームとしての取引高が他の小売業者のECサイトを大きく上回っているため、Amazon Adsは米国のマーケターが広告費をどのメディアに投じるかを考える際、重要な選択肢となっています
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これは、BCGのレポートで、米国のリテールメディア広告費の2/3がAmazonに割り当てられている(推計)ことからも明らかです。この結果を踏まえると、米国のリテールメディア広告の主役は間違いなくAmazon Adsだと言えるでしょう。
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3.リテールメディアの広告種別
それでは、Amazon AdsやWalmart connectはどのような広告メニューを提供しており、マーケターはどの媒体を選択し、広告費を投下しているのでしょうか?
Amazon AdsやWalmart connectによる広告メニュー、サービスラインは、下表のとおり、左から右へ向かって拡充が図られています。
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(1)オンサイト
・純広告(予約型):
自社のWEBサイトやECサイト、自社のオウンドアプリへの出稿
・スポンサー広告:
基本的にはCPC課金の運用型広告であり、AmazonやWalmartのEC内に掲載
EC内で売り上げを伸ばしたい広告主が活用する広告プロダクト
・スポンサープロダクト:
自然検索で表示される商品と並んで表示され、見え方も自然検索の商品と似ている広告
・製品カルーセル:
検索、カテゴリ、および製品ページにて、複数の製品のオプションを顧客に示す
・購入BOX:
購入に関する画面に表示され、購入予定商品に代わる代替商品として案内することで自社商品の購入を促す
・スポンサーディスプレイ:
ユーザーの興味関心に関連性の高い広告を配信
商品軸に加え、閲覧・購入履歴をベースとしたセグメントを活用した広告配信
・オンサイトディスプレイ:
スポンサー以外も利用できるディスプレイ広告
DSP広告の遷移先は広告主のブランドページやキャンペーンサイト等、広告主側で用意するコンテンツベースの広告
(2)オフサイト
・DSP広告:
amazonやWalmartが持つ1stPartyデータに基づいて配信するデマンドサイドプラットフォーム広告 ※Walmart DSP は、The Trade Desk との協業商品
・提携メディア:
Walmart Connectは、TikTokやSnapchatなどと提携し、コンテンツフィード内のビデオ広告やライブコマースから、商品購入へとシームレスに繋げる導線を用意
SNS、ライブコマースやコネクテッドTVなどとの連携により、オンサイトとオフサイトをまたいだ効果的な広告配信が可能
(3)インストア
店内に設置されたデジタルサイネージでの広告、POSレジのスクリーン、タブレット付きカート等
米国では、マーケターが支出する広告費が、購入意向の高い訪問者へ直接アプローチでき、クリック課金で広告出稿効果が明確なスポンサー広告に投下されています。米国で、ここまでの期間に確立したリテールメディアは、実質的には大型物販系ECサイトのオンサイト広告だと言えます。
今後は、物販系ECサイトが保持する1stPartyの顧客データを活用する、外部メディアへの配信が広がっていきます。このオフサイト展開により、従来の、ECサイト内で直接的に購入へ影響を与える役割に加え、ブランド認知や商品への興味喚起など、購買ファネルの手前側の役割が強化されることが期待されています。
このような、リテールメディアの成立から拡大の経緯を見ると、インストアの広告は本格的に立ち上がる手前側の実証段階にあるとみられています。
日本では、リテールメディアと聞くと、ファミリーマートの「FamilyMartVision」のような大きなデジタルサイネージを想像する人が多いかもしれませんが、2022年の市場規模は約70億円(日本)に過ぎません。
また、米国のリテールメディアの進展に比べ、日本は5年から6年の遅れを取っているとされています。米国のAmazonやWalmartのアプローチを単に模倣するだけだと、日本のリテールメディアの活用や市場拡大はさらに遅れてしまうと考えられることから、米国の小売とは異なる登り方や、独自の展開が求められそうです。
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