平成プリなるものなど
朝は普通通りに目覚めた。
昨日の夜はそんなに夜更かしはしていない。
何故かは分からないが彼女が目を覚ます時とほぼ時を同じく僕も目を覚ます。目を開けて隣を見るとすでに目覚めた彼女が朝日に照らされた横顔で僕を見つめていた。それだけで幸せだった。
"おきた?"
悪戯っぽく笑う彼女の顔が綺麗で僕は一瞬言葉が出なくなってしまった。それから僕らは15時前に家を出た。何故朝普通通りに目が覚めたのにその時間になったのかと言えば
ずっとセックスしてた
ここ数日間の空白を埋める様に僕らは求め合ってじっくりと、それでいて激しくお互いがお互いである事を確かめ合った。白く光の飛んだ、霞んでピントのぼやけたようなあの時間を僕は心の底から愛しく思う。
互いの名前を互いの声で呼び合って確かにそこに2人がいることを確かめ合う。やるべき事なんか山程あるのにそっちのけで、時間も忘れて。
おなかがすいた。
朝も昼も飲まず食わずで居たからか僕らは出かけた後急にお腹が空いた。レストランに行って何か食べようと言うことになり、僕らは彼女が学生時代に足繁く通ったというレストランへと足を運んだ。店内に入るなり彼女は懐かしさでいっぱいの表情を浮かべて席へとついた。すると彼女が唐突に
"ファミレスでサラダ食べないと気が済まない女嫌い?"
急に何を言い出すかと思えばこれだ。確かに思い返すとどんな飲食店に行こうとも彼女がサラダを頼まなかったことは無いように思う。きっと普段野菜を取れない生活を憂いて頼んでいるのだろうと勝手に思っている。(ちなみに彼女のお気に入りはシーザーサラダだ)が、本当のところはどうでも良い。変な所で嫌われないかを案じている彼女がたまらなく可愛いだけだ。
気付けば僕はいつもの倍以上の量を食べていた。彼女も"よく食べたね"と目を丸くしていた。その後僕らは商業施設へと足を進めた。
ね、プリクラ撮らない?
分からないか。この呪文の響きが。彼女がプリント倶楽部で写真を撮り、今の僕らを残そうと言っているんだぞ……お前ら!!!分かってるか!!!おい!!事の重大さが分かるか!!!総員!第一種戦闘配備!!!!敵は待っちゃくれねぇぞ!!!
…………んんっ!!んんん!
失礼。取り乱した。つまり彼女がプリント倶楽部を撮ろうと言う事はかなりレアな現象で、何よりものや思い出を大切にする彼女からすればその思い出の物を残すことすら相当のリスクを伴う行為なのだ。それを差し置いてまで彼女は今日この瞬間、僕にプリント倶楽部を撮ろうと提案してきた。(明日死ぬんかワシ)
平成プリなるもの
平成プリなるものが存在するらしい。"仲好"とか"我等友情永久不滅"とかそんなやつだ。正直当時そんなものを撮った覚えが無いが、とりあえずこれらは平成プリと呼ばれるものだそうだ。
盛れないと嘆く彼女を尻目に僕は幸せいっぱいの心持ちを精一杯心の奥に押し込んでおいてプリント倶楽部という特殊な空間を噛み締めていた。
ふと、落書きタイムの時に僕は思い立って"僕ら"と書いてみた。これが存外に良い出来だったのでいつか正式なロゴにでもしようかと思っている。
1日の終わりに
1日の終わりその瞬間に好きな人とくっついているのがこれ程幸せだとは想像もしなかった。一応義務教育も真面目に受けた身ではあるが、学校でも教えてくれはしなかった。そんな嬉しさとくすぐったさとが混在した感覚を今日も胸のど真ん中に感じながら僕らはゆっくりと眠りに落ちていく。
明日の僕らに会いに行く為に。
今日はここまで!
またいつか与太話を。
んじゃ、また!!!