Konstantin Bojanov『Avé』ブルガリア、ゴールを失ったロードムービーは永遠の鬼ごっこへ
ソフィアからルセまでヒッチハイクしようと道路脇に立っていたカメンの下に、どこからともなくアヴェという少女が現れ、突然行動を共にし始める。カメンがなぜルセに行こうとしているのかすら明かされていないのに、アヴェという不可思議な人物はその行動も行き先も謎で、加えて短い時間を共にするドライバーごとに全く違った嘘を並べていく。あるときは恋人のように振る舞い、あるときは兄妹のように振る舞うが、それらの中に軸がないので、ただの愉快犯にしか見えない。それはカメンが自殺した友人ヴィクトルの葬式のために故郷ルセへと戻っていて、アヴェが行方不明の兄を探すために放浪している、という背景が明かされてからも続く。
ヴィクトルの葬式で、アヴェは彼の想い人アンナとしてカメンに付いて回るが、カメンが彼女をこれまで以上に鬱陶しそうにしているのは、その裏に彼がアンナと寝たためにヴィクトルが死んでしまったかもしれないという罪悪感と後悔が隠れているからなのだろう。このシーン単体は非常に上手いと思うが、これまでアヴェが必要もなく嘘を並べたために、重要性が薄れてしまっているように見える。
本作品が特異なのは、それぞれがゴールを無くした終盤で、互いが代わりのゴールとなって永遠の鬼ごっこが繰り返されることが暗示されることだろう。それによってようやく映画に光が差し、物語が始まるのだ。
・作品データ
原題:Avé
上映時間:86分
監督:Konstantin Bojanov
製作:2011年(ブルガリア)
・評価:70点
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