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フランチシェク・ヴラーチル『Shades of Fern』チェコスロバキア、殺人者の当て所なき逃避行

大傑作。フランチシェク・ヴラーチル長編14作目。『ミツバチの谷』から何度か組んでいる脚本家ヴラディミール・ケルネルとの最後のコラボ作品。ヴラーチル自身が脚本に参加しているか否かで映画の出来不出来が180度変わってしまうというのがキャリア後期の傾向として見えてきたわけだが、本作品にもそれは当てはまる。主人公ルダは採石場で働く18歳の少年。趣味は親友ヴァセクと共に近所の森で夜中に密猟することだ。ある日、密猟中に狩猟番を撃ち殺してしまった二人は、緩い逃避行を始める。明らかに未熟なヴァセクはルダの支配下に置かれており、ルダの様々な無茶や自慢に付き従った結果、良心の呵責に苛まれて幻想を見るシーンが挿入されており、観ている映像が現実なのか幻想なのか分からない部分も多くある。緑色のフィルターを通して描かれる深い森の中はそれだけで妖しいのに、現実か否かも分からなくなって、無駄に暴力的なルダが目の前にいるのも含めて、画面は絶えず緊張感で溢れているのだ。まだまだこんな画を撮れるじゃないか!と、"過去の俺は凄かったんだぜ"シリーズを観てきて思うなどした。追跡者が放つ"罪を免れやがった、こんなことあってはならない"という最後の言葉からも分かる通り、二人は恋人同士だったんだろう。殺人と逃避行は、禁忌と弾圧のメタファーであり、殺人を犯す前からの閉塞感もラストになってようやく理解できた。

・作品データ

原題:Stín kapradiny
上映時間:90分
監督:František Vláčil
製作:1986年(チェコスロバキア)

・評価:90点

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