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アンソニー・チェン『国境ナイトクルージング』大人になれなかった大人たちの現実逃避

2024年アカデミー国際長編映画賞シンガポール代表。今年はチェンの初英語作品『Drift』がサンダンス映画祭で上映され、そのすぐあとのカンヌ映画祭で本作品が上映されるという忙しい年であった。中国北部、北朝鮮との国境に位置する吉林省の延吉市で行われる知り合いの結婚式に参加するために上海から訪れたハオフェン(ハマ・オカモトかと思ったけど違った)は、ひょんなことから参加したバスツアーのガイドのナナと知り合う。そして、彼女の友人以上恋人未満的男シャオと三人で、遅れた青春を取り戻すかのように街をぶらぶらし始める。怪我でスケートの道を諦めて、コロナ以降のダメージに苦しむ延吉で延々とツアーガイドを繰り返すナナ、子供時代から勉強を強要されてきて、今でも様々な形で競争を強いられることに嫌気が差したハオフェン、無気力に実家のレストランを手伝い続けるシャオ、三人の束の間の現実逃避である。それ以上でもそれ以下でもない印象を受けるのは、三人の過去が"落とし所"用に作られた単なるラベルみたいに感じられる上に、三人の感情が有機的に繋がらずにただ突っ立ってるだけの関係性にしか見えず、"みんな悩んでんだな~"くらいにしか思えないからだろう。繰り返される氷や雪のモチーフ、止まった時計、題名も含めて、凍った人生(や経済)の解凍がテーマなんだろうけど、要領が悪すぎて全然上手くなかった。そういえば『永遠に続く嵐の年』の短編もクソつまんなかったわ。どうでもよすぎて忘れてた。

・作品データ

原題:燃冬
上映時間:97分
監督:Anthony Chen
製作:2023年(中国, シンガポール)

・評価:40点

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