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フランチシェク・ヴラーチル『The Little Shepherd Boy from the Valley』戦車の遺された草原で少年は夢を見る

フランチシェク・ヴラーチル長編12作目。東欧の子供映画を観よう!企画。ラディスラフ・フクスによる同名小説の映画化作品。『暑い夏の影』と同じく1947年のベスキディ山脈を舞台としており、ナチス残党が山麓で暮らす人々の生活を脅かしているという状況も共通している。終戦から2年というタイミングではまだ戦禍が残っており、草むらに戦車が放置されていたり、ナチの残党が逃げ回っていたりと、中々穏やかではない。また、主人公の父親は言及されないが戦死しており、地主の家の女中をやってる母親も無気力で不安定な状態で、生活を支えるために学校に行く余裕もないなど、家庭環境としての側面でも戦争の影響が見て取れる。本作品はそんな"平和だが平和でない"状態の世界を子供の目線で描いている。その点で『Sirius』と対になっている作品とも言えるだろう。本作品では祖父が少年に語る御伽噺が現実とリンクしてくるという設定上、主観の映像表現もどこかファンタジックになっているのが最大の違いか。『Sirius』よりも子供の無邪気さが強調されていて、特にそれが何とは知らずに地雷を拾って持ってくるシーンなんかは心底恐ろしかった。まぁそれよりも構造や構成が『暑い夏の影』とほぼ同じなことの方が恐ろしいのだが。

・作品データ

原題:Pasáček z doliny
上映時間:80分
監督:František Vláčil
製作:1983年

・評価:60点

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