Laurynas Bareiša『Drowning Dry』リトアニア、ある姉妹其々の家族の穏やかな時間と
2025年アカデミー国際長編映画賞リトアニア代表。Laurynas Bareiša長編二作目。本作品はエルネスタとユステという姉妹を中心に、二人の夫と二人の子供たちについて描いている。エルネスタの夫ルーカスはMMAの格闘家で、比較的強い選手のようだが、エルネスタは彼が戦い続けることに不安を感じている。ユステの夫トマシュは人の良い小太りのおっさんだが、ハンドルを握ると人が変わることが指摘されている。エルネスタの一人息子クリスタパスとユステの一人娘ウルテは同年代で、仲も良好である。姉妹の家族は仲良く湖畔にある両親の残した別荘に旅行に出かけ、のどかな自然の中で週末をゆったりと過ごす。その後に起こる悲劇も知らずに。上記の通り二人の夫には不安要素がある他、別荘の準備をする妻たちとなんもせずに寝転がってる夫たちという対比などを利用することで、何気ない時間にヒヤリハットが潜んでいそうな緊張感を持たせ、サスペンスに変貌させているのが上手い。映画はユステが溺れかけるという決定的な瞬間を迎えた瞬間に、姉妹それぞれがそれぞれの理由でシングルマザーとなった未来へ転移するように時間が飛び、我々に見ることの出来ない"間の時間"に何が起こったのかということを、与えられたヒントで想像させるのだ。こうして日常生活は些細な不和の種が撒かれた不安定な土壌へと変貌していく。題名"Drowning Dry"は、溺れかけたユステが陸に上がって暫くしてから息が粗くなる症状を表しているのと思われる。つまり陸にいて溺れる、という普通に考えるとありえない状況である。しかし、幸せな時間を過ごしているときには考えもしないことが、あっという間に訪れてしまうのだ。とはいえ、最終的には答え合わせにしかなってない感じの終わらせ方はなんだかなあと。
・作品データ
原題:Sesės
上映時間:88分
監督:Laurynas Bareiša
製作:2024年(リトアニア, ラトビア)
・評価:70点
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