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アリーチェ・ロルヴァケル&JR『An Urban Allegory』現代版"洞窟の寓話"は都市の隠された顔を見る

傑作。アリーチェ・ロルヴァケル新作短編、JRとの共作は『Omelia Contadina』以来二回目。なんとFestivalScopeに無料配信で来ていた(現在日本からはジオブロックが掛かっており鑑賞不可能だが少なくともフランスからなら鑑賞可能)。"プラトンの洞窟の寓話は知ってるか?"とレオス・カラックスは主人公親子に尋ねる。生まれたときから洞窟に繋がれる我々は、洞窟の壁しか見ることが出来ず、その影/幻想を現実を勘違いしている。では、洞窟から逃げようとした者がどうなったか知っているか?と。そして、少年は街に繰り出し、壁面の奥に隠されていたものを知る。今年はジェーン・シェーンブルン『I Saw the TV Glow』のように、物理的に超えられないメディアを超えることで、"先に進んだ人"を表現する作品をよく見かける気がする。本作品でも後半はJRに託したかのように、壁の中の世界に入り込んだコマ撮りアニメとして展開される。壁を伝って移動していくので、通ってきた場所の色が若干変色しており、レオン&コシーニャ『オオカミの家』を思い出した。また、万華鏡、バレエ、丸めた壁紙といった回転のモチーフを多く登場させることで、"振り返る=洞窟の入口を見る"という動作を誘発させようとしているが、実際に少年が"振り返る"動作はなく、壁面を真ん中に置いた切り返しとして、つまり壁のコチラ側から(→入口を見る)もアチラ側から(→洞窟に留まる人を見ている)も壁面を見ることで"振り返る"動作を完成させているのは面白かった。なにせ"壁だと思っていたものが壁ではなかった"として話を進めるので、それを知るために"振り返る"必要がないのだ。一方で、それを指し示したレオス・カラックスは初登場時、画面奥を向いていて、主人公親子と話すために"振り返る"し、主人公の母親も息子と向かい合うことで"洞窟の入口"の存在を知り"振り返る"。世代の違いということか?ただ、こういう"気付いちゃった…"みたいなテーマって、ポジティブな面も大いにあるけど、陰謀論との親和性もめちゃくちゃ高いので、手放しに称賛はしにくい。

・作品データ

原題:Allégorie Citadine
上映時間:21分
監督:Alice Rohrwacher, JR
製作:2024年(フランス)

・評価:80点

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