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ユリア・ソーンツェワ『魅せられたデズナ河』遥かなるウクライナの大地より
凄まじい大傑作。血のような赤で水面を染めながら顔を出す太陽、そして地上1mで花火をやっとんのかというくらいの大爆発と黒煙(今日日マイケル・ベイでもやらないくらいの爆発)、爆走する戦車。これが、ドヴジェンコが遺したドヴジェンコについての物語を未亡人ソーンツェワが映画化した作品の始まりである。こんなバキバキの作家性が滲みながらブチ上がるオープニングが他にあるか。戦争によって荒廃した故国ウクライナに戻ってきた主人公がその少年時代を思い返す前半では、荒廃した"現在"のウクライナとはかけ離れた緑の生い茂る肥沃な大地が登場人物の一人として登場する。少年オレクサンドルが畑を走ると、緑の畑はヒマワリに、そしてポピーに変わり、華やかな色彩の横移動が完成する。本当にカラーになった『大地』という感じがするくらいにはドヴジェンコなのだが(空への執着とか大量のクレーン/ブルドーザーみたいな技術礼賛とか)、それもナチスが侵攻してくる壮年期は『戦場』的な真っ暗画面へと一気に様変わりしてしまう。川を渡って逃げるシーンなんか真っ暗で俳優がどこにいるかも見えないのに、背後に黒煙があがってることだけは分かるというソーンツェワの力の入れようには笑えてくる。
ただ、やはりソーンツェワの異常さが光るのは少年期の方である。木をユサユサしてリンゴみたいな実がボトボト落ちてくるスローモーションとか、最早荘厳な輝きを放っている。農具を持って喧嘩を始め、スローモーションの追いかけっこから唐突に逆立ちして、二枚刃ピッチフォークを刺又みたいに使う一連のシーンも忘れがたい。
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・作品データ
原題:Зачарованная Десна / The Enchanted Desna
上映時間:77分
監督:Yuliya Solntseva
製作:1964年(ウクライナ)
・評価:99点
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