20230418
ローベルト・ゼーターラー『ある一生』(浅井晶子訳、新潮クレスト・ブックス)を読んだ。雪山の麓で生きたエッガーという男の生涯を描く。幼くして両親を亡くし、養父のもとで育つが彼の虐待で片足を不自由にしてしまう。それでもエッガーは筋骨逞しく成人し、独立する。山の宿場で出会ったマリーという女性との大恋愛、雪山での過酷な労働、戦争への従軍、抑留、帰国後の観光ガイド、孤独な余生……いわゆる正史には残らないような男の一生を丁寧に雪山の荘厳な景色と共に端正な文章で綴っている。まさに、小説にしかできないような試みであり、わたしもそうした歴史から零れ落ちる人生を描きたいと改めて思った。
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