20231124
ル・クレジオ『隔離の島』(中地義和訳、ちくま文庫)を読んだ。製糖工場で働く移民を乗せた旅船が天然痘の発生で隔離政策を受けた祖父の体験をもとにプラト島での四〇日間の様子を描く。彼のルーツであるモーリシャスをめぐる三部作の第二部として書かれたという前提を知らずに読んだが、内容としては独立していた。初めて作者の作品を読んだ。作者の意図したところかは分からないが、やたらと虹彩の色と肌の色にフォーカスする女性描写に辟易してしまった。と同時に、ヨーロッパでの人種差別は確かに彼らが外見で人種やルーツを判断する日常性から生まれたのだろうということを痛感した。読んでいて辛かったのは、この小説のメインとなる第三部で第四部のアンナ、そして最後のモーリシャスを訪れて書かれたエッセイのような断章は面白く読めたので視点の問題だと感じた。作品ではランボーがかなり重要人物として通底しているのだが、彼の犬を毒団子を食べさせて殺していたというエピソードがめちゃくちゃショックすぎた。