サウナで自律神経を整え、クリエイティビティを高める
ビジネスパーソンに人気のサウナ
常に時間に追われるビジネスパーソンにとって、「うまく息抜きをする」ことはとても大事ですが、これが難しいと感じる人が結構多いのではないでしょうか。なぜなら、何にどれくらい時間をかければ効果的な息抜きになるか、わかりづらいからかもしれません。短すぎると効果は薄いですし、長すぎると再び仕事に戻るまでのロスが多そうですよね。
そんな忙しいビジネスパーソンの間で人気なのが、サウナです。サウナに入ることで心身が「ととのう」という効果がクローズアップされているので、これについては後述しますが、サウナのわかりやすい効果は、リラックスできて、脳疲労がとれ、睡眠の質が向上し、翌日の仕事の生産性が明確にアップする、といったところでしょうか。こうした効果の背景には、自律神経の働きが大きく関係していますので、これも後述します。
ところで、日本のサウナ人口は、コロナ禍前のデータによると、年に1回以上サウナに行く「ライトサウナー」が推計約2,900万人、月1回以上サウナに行く「ミドルサウナー」が推計約1,200万人、そして、月4回以上(つまり、週1回以上)サウナに行く「ヘビーサウナー」が推計約390万人もいます。(出典:日本サウナ・温冷浴総合研究所 2018.3.7)
そして、この「ヘビーサウナー」の中には、経営者、起業家、クリエイターなど、クリエイティブな発想を常に求められる人たちが多数含まれています。というのも、サウナには上述の効果の他にも、クリエイティビティを高め、良いアイデアを生み出す効果が期待できるからです。
さらには、サウナとコワーキングスペースが一体化した施設なども登場しており、クリエイティブなビジネスパーソンにとって、サウナは有効なビジネスツールになりつつあるのかもしれません。
サウナで「ととのう」とは
サウナの様々な効果に関係するのが自律神経の働きです。では、「ととのう」とはどういう状態なのでしょうか。それは、瞑想しているような状態でありながら、覚醒しているという不思議な状態で、さらには癒されているという感覚が加わる、「瞑想+覚醒+癒し」が同時に起こっている状態です。では、なぜこのような状態が生まれるのでしょうか。
サウナは、仕事などで高まりっぱなしの交感神経(車のアクセルに相当)を強制的に副交感神経(車のブレーキに相当)優位に切り替えてくれます。日本サウナ学会代表理事で医師の加藤容崇さんによると、サウナで重要なのは、「水風呂に入ること」のようです。
以下、加藤容崇さんの説明を引用させていただきます。
さらに、
というわけで、この「血中には興奮状態で出るアドレナリンが残っているのに、自律神経は副交感神経優位になっているという『真のととのい』と呼ぶべき稀有なリラックス状態」が、上述の「瞑想+覚醒+癒し」が同時に起こっている状態の正体ですね。
サウナの効果測定の結果は?
私の会社(WINフロンティア)では、「コワーキングサウナ」を推進するコクヨ株式会社と、ウェアラブルセンサを使用して、サウナが自律神経に与える効果を実際に測定しました。以下のグラフは、人間情報学会にて、「サウナが生体情報に与える影響に関する研究と実用化について」と題して、コクヨの方が発表したデータです。
このグラフから一目瞭然で、サウナ入浴後は副交感神経の割合が有意に高まっていることがわかると思います。つまり、サウナによって、それまで交感神経優位だった自律神経のバランスが副交感神経優位にスイッチしたということですね。
また、上述の日本サウナ学会代表理事で医師の加藤容崇さんによると、高精度な脳波計でサウナ後の脳の状態を計測したところ、「脳がリラックスしていることを示すα波の『正常化』が確認できた」とのことです。つまり、脳疲労が軽減したと推測されます。
実際にサウナをよく利用するアントレプレナーの方の感想を聞くと、サウナに入った瞬間、熱気でごちゃごちゃと考えることができなくなるので、重要性や緊急性の低いことは一切考えなくなり、本当に考えるべき本質的なことだけを考えるようになると言います。
脳疲労がとれて頭の中がリセットされると、これがちょうど、クリエイティビティを産み出すのに有益といわれているインキュベーション期間(あたため期)の役割を果たし、忙しい日々の中で忘れていたような潜在的な考えが、アイデアやインスピレーションとなって降ってくる可能性が高まると考えられます。
このようにサウナの様々な健康効果や「ととのう」という経験、そして、アイデアやインスピレーションが産まれやすくなるという経験、さらにはコクヨが展開している「コワーキングサウナ」など、コミュニティとしての魅力から、経営者や起業家、クリエイターなど、クリエイティブな発想を常に求められる人たちはサウナを好むのだと思います。