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最も疲れやすい「木曜日」をうまく乗り切る方法

鍵となる自律神経の働き


ウィークデイも半ばを過ぎた木曜日。翌日の金曜日になれば、「明日から休みだから、あと少し頑張ろう!」という気になる人も多いと思いますが、木曜日の場合、そうはいきません。なにせ、あと1日、金曜日が残っていますから。

私たちのコンディションは曜日毎に変動しますが、そのコンディションの鍵を握るのが「自律神経」です。私の会社(WINフロンティア)は、自律神経を計測するアプリ『COCOLOLO』(累計160万超ダウンロード)やウェアラブルセンサを使って、これまでに多くの人の日常生活における自律神経の状態を測定しており、計3,000万件以上のビッグデータを収集してきました。私自身もベンチャー経営の傍ら、順天堂大学医学部の大学院(博士課程)で、自律神経の第一人者といわれる小林弘幸教授のもと、自律神経と生理心理学の研究を行い、主にビジネスパーソンのストレスや様々な感情の測定に携わってきました。そこから働く人の曜日毎のコンディションについても色々なことがわかってきています。その一端をご紹介する前に、そもそも自律神経とは何かについて、簡単に説明します。

自律神経は、内臓や血管の機能をコントロールする神経で、私たちの生命活動の根幹を支える非常に重要な機能を担っており、ストレスとも強い関係があります。そして、自律神経は下図のように、「交感神経」と「副交感神経」の2種類に大別され、交感神経が体を支配すると体はアクティブな状態になり、同時にストレスを感じる状態になります。一方、副交感神経が支配すると体はリラックスした状態になります。体が最も良い状態で機能するのは、交感神経と副交感神経の両方が高いレベルで活動している状態のときです。そして、自律神経の活動量の総量のことを「トータルパワー」と呼びますが、疲れが溜まってくると、このトータルパワーが低下してきます。では、曜日毎にこのトータルパワーはどのように変化するのでしょうか。それを次にご紹介します。

自律神経の働き


自律神経の活動量が最も低下する「木曜日」

 

上述の通り、自律神経を計測するアプリやウェアラブルセンサを使って、日本人の日常生活における自律神経のデータを3,000万件以上収集し、解析した結果、幾つかの重要なことがわかりました。その中のひとつが、日本人が最も疲れを感じる曜日は何曜日かということです。私たちのデータに基づく答えは「木曜日」でした。週の半ばを過ぎて、あともうひと踏ん張りすれば週末だという「木曜日」に最も疲労・ストレスを感じているようなのです。自律神経の状態としては、自律神経の総活動量であるトータルパワーが低い状態です。

曜日別のトータルパワーの推移  
出典:Komazawa, M., Itao, K., Kobayashi, H., & Luo, Z. (2016)

もちろん、このような生体情報には個人差がありますので、万人にこれが当てはまるわけではなく、あくまでビッグデータを統計解析した結果です。しかし、感覚的に木曜日に疲れのピークがやってくることに納得できる人は、ぜひ、木曜日は早めに仕事を切り上げる、あるいは、木曜日は在宅勤務の日にするなど、意識的に対策をすることをおすすめします。

特に、自律神経のトータルパワーが低い状態の時は、活力がない状態ですので、仕事の生産性は上がりません。また、創造性(クリエイティビティ)を発揮する上でも、活力がない状態では、覚醒水準も上がらないため、良いアイデアを出すには不向きだと考えられます。では、このような「木曜日」を乗り切るのに有用な方法を次にご紹介します。


「木曜日」を乗り切るために有効な呼吸法


「木曜日」を乗り切るのに有用な方法は、端的に言うと呼吸法です。呼吸法といっても世の中には様々な呼吸法がありますが、ここでおすすめするのは、「心拍変動バイオフィードバック呼吸法」というやや小難しい名前の呼吸法です。でも、やり方は至ってシンプルで、「息を吐く」と「息を吸う」の1サイクルを10秒で行う(つまり、1分間に6サイクル)だけです。「息を吐く」方を長くした方が良いので、「7秒吐いて、3秒吸う」がおすすめですが、個人差がありますので、7秒吐くのが苦しいと思う人は、「5秒吐いて、5秒吸う」から始めても良いです。この1サイクル10秒の呼吸を行うことによって、心血管系の共鳴を引き起こし、心拍変動を増大させ、副交感神経の活動、ひいては、自律神経のトータルパワーを活性化させる効果をもたらすことが、複数の研究で明らかになっています。

本来、心拍数や心拍変動の値を測定し、それをモニターにリアルタイムで表示し、波形を確認しながら呼吸法を行いますが(これをバイオフィードバックといいます)、このバイオフィードバックはなくても、ストップウォッチなどで時間を計測しながら呼吸するだけでも十分効果が得られます。

心拍変動バイオフィードバック法による呼吸法を、1回15~20分、1日2回、1週間継続することで、ストレスや不安の軽減効果が確認されています。また、心拍変動バイオフィードバック法による介入を行なった24の研究をメタ解析した米ボストン大学の研究でも、ストレスや不安の軽減に十分な効果があることが確認されています。

「木曜日」を乗り切る上では、就寝前に10分程度、この1サイクル10秒の呼吸法を行うことをおすすめします。そうすると睡眠の質も上がり、翌日のコンディションが上がることを実感できると思います。

参考文献:
・Komazawa, M., Itao, K., Kobayashi, H., & Luo, Z. (2016). On human autonomic nervous activity related to behavior, daily and regional changes based on big data measurement via smartphone. Health, 8(09), 827.
・Goessl, V. C., Curtiss, J. E., & Hofmann, S. G. (2017). The effect of heart rate variability biofeedback training on stress and anxiety: a meta-analysis. Psychological medicine, 47(15), 2578-2586.
・榊原雅人. (2011). 呼吸法はなぜ健康によいのか?: 心拍変動バイオフィードバック法からみた自律神経メカニズムと心理学的効果.

 このnoteの連載が書籍になりました!クリエイティビティとメンタルのことを詳しく知りたい方にオススメです。


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