2024年未来10月号詠草『終わりへの旅』
2024年未来10月号詠草『終わりへの旅』 風野瑞人
黒猫の黒の理由を訊くように傾く時間 のびていく影
スクランブル交差点でもぶつからない国で平和が黄昏てゆく
寛容のあふれかえったゴミ箱をカラスもつつくことさえしない
集積所 両手をなくしたぬいぐるみ きっと疲れてしまったのだろう
未来と書き「トワイライト」とルビをふる それも沈む方 昇らない方
手づくりの砂糖細工を頬張って赦された振りおろかな文明
いつか見た象の沈黙 いつまでも墓石のようにじっと わたしだ
天上をひたすら目指す少女らの終末の旅にわれをかさねる