2024年未来4月号詠草『前略 たくさんのきみ』 風野瑞人
2024年未来4月号詠草『前略 たくさんのきみ』 風野瑞人
夕暮れの相談室のエアコンのちいさな音よりちいさな訴え
いくつもの悲劇が通り過ぎた末どこかへ行った ひとりだけのきみ
こんにちは今日はどのきみ またひとつドラマのような辛さに聴き入る
ごめんなさい あやまるきみと前の日のひどくなじったきみも同じで
真夏でも長袖だったその訳に触れないように 知られぬように
珈琲のカップを置いて笑うときわずかに見えたちいさな八重歯
たくさんの自分を抱え生きるしかなかったきみの不意のさよなら
お守りの文庫の歌集まだ読んでいるのいないの 息をしてるの
いつかまたが来ないとわかる でも次はもっとみんなと伴に走るよ