熊の飼い方 52
影 28
朝の光とともに目が覚めた。生きている。生きているべき人間は僕ではないはずだ。首元が痛む。自分の首を絞めつけようとしてみたができなかった。
ごっさんの言葉が頭から離れなかったからだ。
『生きてしっかり償ってください。』
今日は何もしたくない。作業場に行ったところで、ごっさんのように話す人などいない。それに、頑張ったところで何か救われるということもない。また、迷宮に入り、出口が見えないばかりか入り口に戻ることさえもできなくなってしまった。
しかし、そんなことで作業を休むことなんてできない。無理やり部屋から出され、作業に連れていかれた。
そんな僕の気持ちとは裏腹に、外は青々と光り輝いている。こんな天気のいい日は、ごっさんが言っていたように空を眺めてボッーとしたい。
そんなことすら出来ない自分と、この状況に腹がたつ。死ぬことさえも許されないことに腹が立った。あぐらをかき、俯いたまま時間だけが過ぎていった。
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