雨の日に思い出すこと
高校の頃、なんだか何もかもがしんどくなってしまって、大好きなおばあちゃんも神様のところに行ってしまい、
しんどくてしんどくて、塾に行こうと思ってたのに駅の近くの公園のベンチでリュックを抱えて、ボロボロボロボロ泣いてしまったことがある。
普段から泣かない子で有名だったから、自分からこんなに大量の涙が溢れることに驚いて、
でもそれでも止められずにしゃくり上げていた。
そんな時に、赤ちゃんと犬を連れた若いお母さんが隣に座って声をかけてくれた。
そんなに泣くほど辛いことがあったんだねぇ、でも大丈夫、大丈夫よ。
そう声かけてくれた。赤ちゃんもわたしの顔をじーっとみて、いぬも足元に寄り添ってくれた。
ほら、この子も大丈夫って言ってる。
潤んでぼやけた視線の先の驚くほど綺麗な瞳。いつのまにか心が柔らかくなっていくのを感じた。
別れ際は覚えてないし、泣き過ぎていてその方のお顔も覚えてないのだけど、
今でも辛いことがあるたびに、その優しい若いお母さんの気配が心に寄り添ってくれている気がしている。
名前も知らないし、もし道でばったり会っても絶対にわからないと思うけど、
そんなふうに全然知らない人に優しくしてもらった経験は、わたしの心に大きく根を張っている。
生活や人間関係に疲れてどうしようもなく1人になりたいと思う時は今でもあるけど、
知らない人も大人も子供も男の人も女の人も優しい人も意地悪な人もいる世界で生きていることも悪くないと思う。
わたしもこの世界の中で生きていてもいいんだと思えるのは、この優しい思い出のおかげだ。
いつもしとしと雨が降っているような時に思い出す、心の深いところにある宝物。