すべてはジーンのしわざ
マークス・アンド・ウェブ。おしゃれだよねー。
ここが、ナチュラルローソンなどでおなじみのあのブランドたちと同じ会社松山油脂がやってるって、今日まで知らなかった。
松山剛己社長は、おしゃれだ。カッコいい。それもそのはず、中学から慶應ボーイなんだから。東京は墨田区生まれ。墨田区って、昔から石鹸メーカーの街らしいね。花王、ライオンもここ。
学生時代アルバイトでマガジンハウス『ポパイ』編集部にいて、たまたまモデルさんが都合悪くなった代打で撮影に入ったら、そのまま表紙になっちゃったという。
ちょうどぼくも同じような世代、『ポパイ』読んでたからわかる。
表紙に映る彼は、「あこがれのシティボーイ」だ。
当時のぼくには手の届かないあこがれ。
大学卒業後、博報堂に入った。その後、三菱商事に転職。ところが、ここでさっぱり成果を出せなかった。4年間いたが、自分の感性と行動力が全く活かせなかった。そんな折、実家が「石鹸業を畳もうかと考えている」。三菱商事で悶々としていたこともあり、継ぐ決意を固める。
この話を聞いた時、ぼくはブランド・ジーンのしわざだな、と思った。
仮に松山さんが三菱商事で活躍し、手応え十分だったら、実家に戻っていただろうか。
ジーンは、その後、自然派石鹸として、Mブランドやマークス・アンド・ウェブなどの店舗展開を「やりたかった」。そこで、博報堂のままでは辞めないので(笑)、三菱商事に転職させ、「活躍できないようにした」。
結果、ジーンの思惑通りに、今や押しも押されもせぬブランドへと成長している。売上は20倍になった。ぼくたちはそのおかげで、自然派石鹸やおしゃれなショップを楽しめる。
ま、これはあくまでぼくの勝手な想像だけど。
人さまの話はここまでにして、自分自身でも感じるんだよね。
学校出て、旭化成入って。新人の頃は、まあ、大学の延長みたいなもので、楽しくて。
そっから広島転勤。中国五県を出張しまくる毎日。時はバブル、同期の誰それがヘッドハンティングされたの、なんのと都会からは華やかな話が飛んでくる。自分はと言えば、新下関で真っ暗な道をビジネスホテル目指してトボトボ歩いてる。
大阪に転勤なったらなったで、上司と合わない。何のかんのとやられる。もう、人ってこんなにも意地悪になれるのか、と思った。以前は優しい人だったんだけど。
最後のさいごは、チームから外され、別の商品担当へ放り出された。つまり、「辞めろ」というジーンからのメッセージだったんだね。今から思えば。
そう。その上司はジーンに「嫌な人」のキャスティングをされちゃったんだ。立派に演じていたよ、ほんと。
まっすぐ歩きたいのに、なぜか曲がってしまうことって、あるよね?
自分では前行きたいのに、後ろばかりに引っ張られる。
ジーンが、そっちじゃないよ、と教えてくれている。
かと思えば、「理由はわからない。なぜか」やってしまっていることがある。ちょうどぼくのNPO法人立ち上げがそれだ。夢にも思ってなかった。なのに、なぜか、やる羽目になってる。ジーンのしわざだ。
ブランド・ジーン。面白いですよ。人間がすべて決めているようだけど、実はそうではないという。