ブランド・エステティクス(美学)
BE:FIRSTバンテリンドームライブの余韻が醒めない。
アリーナSS席、前から2列目。メンバーの汗も見えた。演出の炎が噴出したときは熱かった。
21日に体験し、ずっとぼんやりしてる。だからメルマガSurfin’もnoteも書けなかった。
BE:FIRST、そしてSKY-HI率いるBMSGはエンタテイメントのプランBを確実に実行していっている。
リンクの動画では海外進出にフォーカスされているが、BMSGのブランド・アイデンティティはそこだけではない。海外進出は手段であり、目的ではないことは明らかだ。
エンタテイメントのプランBを企画・実行する
これこそがBMSGのブランド・アイデンティティ。
たとえば、ライブのお約束を更新した。
あるに決まってるアンコール。
あるに決まってるのにいったんみんな舞台からはけて、観客はアンコールコールし、ぎりぎりまで待って、結局また現れ、アンコール曲をやる、という。考えてみればアホらしい時間(笑)
どうせやるに決まってるんだから。
ところがBE:FIRSTは違った。
ライブ、一曲めからラスト曲まで、すべてストーリーの糸でつながっている。
そして、いったんはけて、再登場し、パフォーマンスする曲にも必然のストーリーがある。
ドームならではの演出。
詳しく書くとネタバレになるのでここまでにしますが、とにかく、すごかった。
「すごい」としか言えない。
バンテリンドーム、野球の場合だと5万人。BE:FIRSTライブ、内野・外野にもS席、SS席を用意するからさらに人数多い。
仮に5万人だけだとしても一人15,000円だから7億5千万円の売上になる。
S席、SS席(一人3万円)入れてざっくり8億。
これが一日の売上、名古屋は2日やったから16億。
ドームライブはこのあと福岡、大阪、東京とやる。
グッズ売上も足すと、いったいいくらになるのか。
パーカーがたしか12,000円。一万人が買ったとして1億2,000万
そしてこれらすべて事前決済だから、入金されている。
それを原資として、ライブを組み立てられるわけだ。
だから演出の自由度が高まる。ドームの端っこのベスティ(お客さん)にも届けられる。
チケットは10月時点で完売しているから、BMSGのエネルギーは「売る」には使わなくていい。とことん、ベスティを楽しませることに集中できる。
ライブの最後、映画のエンドロールのようにスタッフの名前が出てきたんだけど、その数の多さに驚いた。彼らプロフェッショナルたちにきちんとギャラを支払える原資の裏付けあってのことなんだなあ。
マーケティングNEOの素敵な素材として使わせていただきます。
さて;
DX(デジタル化)によって
「人と人の間の温もり」
「笑顔の交換」
「喜びの連鎖」
「感動の分かち合い」
という水分、潤いがきれいさっぱり洗い流され、ちょうど冬のいまの時期のように
乾燥しきってしまっている。保湿成分がまるでない。
だからあらゆるビジネスで
いまの延長となるプランAではなく
まったく違う発想のプランBが必要
と考え
クライアントさんや塾生と一緒に実行している。
上記のようにSKY-HIはエンタテイメント業界でプランB実行しているよね。
セオドア・レヴィットは言う。
レヴィットはぼくがマーケティングの師匠として尊敬する人。
(ここから)
有形財と無形財、いずれにも無形性が含まれている。
マーケティングとは、要するに、顧客を獲得して、それを維持するための活動だ。
顧客を獲得する上で、決め手になるのが無形性である。
(ここまで)
「無形性のマーケティング」より。
Marketing Intangible Product and Product Intangibles
Harvard Business Review No.81306 MAY-JUNE 1981
by Theodore Levitt
ハーバード・ビジネス・レビュー掲載論文で、来月から始まるオンラインマーケティング講座『The Marketing』DAY1で使う。現在翻訳中。あ。まだお席ご用意できますよ。
ここでいう無形性、つまり目に見えない部分の決め手になるのが、人の関わる部分であり、言い換えると、「人によって品質にバラツキが出やすい」。
現場のDXはこの「属人的な品質のバラツキ」を無くそうという動機もある。
簡単にいうと、「愛想良いAさん」と「無愛想なBくん」ではお客さんの印象が変わる。
それによって来店リピート率が変わるのであれば、均一化したい。
というより
そもそも接客を無くしてしまえば要らぬ手間が省ける。
こうして日本のスーパーマーケット、コンビニ、ドラッグストア、多くのカフェチェーン、ファストフードチェーンの顧客接点現場から「接客」が消えた。
商いから接客が消える
というのは人類史上初。
接客についてはここまでにします。
さて、プランBだけど、考えるために鍵となるのは、やはり無形性。
南禅寺豆腐さんのマーケティング担当をさせていただいています。
豆腐ビジネスは「豆腐」を売っていた。形ある有形財としての豆腐。
スーパーマーケット、ドラッグストア、多くのネットショップは不治の病に罹患してる。
デフレ教。
強烈な感染力で、「安くしないと売れない」という「不治の病」。
残念なことにお豆腐ちゃんはデフレ教の強烈な信者「スーパーマーケット」の客寄せ商材になってしまった。
「木曜日は豆腐の日」みたいなやつね。それで5個百円とかわけのわからない価格になった。
ところがそういう「低価格」ができるのは工場で大量生産するメーカーであり、朝2時に起きて手作りしている町の豆腐屋さんは無理だ。
結局それで町の豆腐屋さんは経営が立ち行かなくなり、廃業、倒産が相次いだ。いまも続いてる。
有形財同士が有形財のスペックだけで戦っても、勝負は見えている。
ぼくはプランBとして、「原点回帰」を考えた。
美味しい手作りの、身体に良い材料しか使ってないお豆腐ちゃんを届ける
これ、豆腐ビジネスの原点だ。
有形財としての豆腐。
これに無形財を添える。
お豆腐ちゃん
と呼ぶ(笑)
ブランド・アイデンティティとしての「愛すべきお豆腐ちゃん」。
どんな施策を打つにせよ、「それ、お豆腐ちゃんが喜ぶか?」という問いを必ずするようにした。
ブランド・エステティクス(美学)を言語化した。
「南禅寺御用達(ごようたし)」
「素食(そしょく)」何も足さない・何も引かない。ありのままの素材を楽しむ
「京都」
「京の文化・歴史」
「京の他の食材とのつながり」
「禅」
「100年を超える老舗の暖簾」
「濃いファンとリアルな交流をするイベント」
イベントでは上記の要素を実体験していただく企画にする。
・「素食と民藝」についてのトークライブ(南禅寺豆腐屋・西島さんと阪本)
・京のお庭を見学する
・無添加お出汁の老舗「うね乃」さんでのお出汁体験
・南禅寺門前に店を構える湯豆腐の老舗「順正」さんでの湯葉作りと実食体験
*このイベントには工場の製造担当者も参加し、
「(いまみなさんが召し上がっているお豆腐は)今朝ぼくが作りました!」
実際に工場で豆腐作ってる人と交流できる機会はめったに無い。
これらの施策を実行してきた結果、具体的な数字は割愛しますが、しっかり成果が出始めた。ネットショップは今月過去最高の売上になる見込み。
BMSGといい、南禅寺豆腐といい、プランBの核にあるのは、
ブランド・エステティクス(美学)だ。
長くなるので、美学についてはまた別にお話しますね。