ゆるめたり、ひっぱったりしながら
用事もなしに出かけることにしたのだが、ふと垂水商店街が浮かんだ。
連載コラム『商店街物語』書いてる。その編集部が垂水商店街にある。
横浜から大阪へ拠点移した際、挨拶に行ったきりだから12年ぶり。今日まさか出かけるとは思ってなかったので「あかん」服で来ている。編集部には顔出さず、商店街だけ見て取材しよう・・・あ。用事のため出かけることになってしまった。百閒先生に叱られそう。
垂水は須磨よりいっこ西。北浜(JOYWOW)から遠い。乗車1時間以上。
着いた。垂水駅、スタバできてる。
さて、どっちへ行けば商店街だっけ。あいまいなまま歩いた。見えた。
おお。ブラジルさん元気でやってるやん!
12年前の記憶にある店はここともう一軒、服屋さんで、どっちも元気。
気持ちが感傷へ育つまで待てず、いきなり空が見えた。工事。再開発か。
こっから先、すべて現場壁。
こういうのが2026年3月建つらしいが、つまらんなあ。色気・湿気がない。
そのまま抜けてしまった。新興宗教の立派な教会が建ってる。以前はなかった。どこの宗教かと確認したら垂水小学校だった。なんじゃこれ。
駅まで戻ったが、このままでは手ぶら。取材として成り立たん。
片付かない気持ちで案内板見たら、なんと、古墳があるというではないかワトソンくん。
「この近くの古墳」とグーグルに指示。
よし、行こう。
おそらく、山越えて、海へ向かう丘陵にあるはず。古墳ってのはたいていそういう作りになってる。なぜなら、古墳に埋まるエラいさんが海に向かってドヤリングするため。
予想通り、山登りのようだ。
住宅地を通る。静か。立派な一戸建てが並ぶ。中には新築もあり、ということは、子育て世代もいるはず。商圏としては成立するね、これは。
着いた。
皇室祖先の古墳は宮内庁管轄。五色塚古墳はこのエリアでブイブイ言わせてた豪族の墓なので、神戸市が管理してる。管理室でチェックイン、入場料無料。申し訳ないから帰りに絵葉書300円買って500円玉、お釣りは寄付します。
階段上がると、空が広がる。明石海峡大橋、淡路島。
もらったパンフレットを残らず読んだが、わけわからん。つまり、詳しいことはわからん、ということ。
そりゃ2000年前のことなんか、わからんよね。
現場壁に「垂水歴史館」写真あった。写真あるくらいだから、遠くて70年前とかだろう。
垂水は以前、筒井康隆さんが住んでらして、日記によく出てた。その頃は活発で、たぶん、色気・湿気ある商店街だったはず。それにしても、せいぜい50〜60年前の話だ。
商店街が再開発などで様変わりしてる。
でもそれも、100年の単位で見れば、微細な違い。
瀬戸内海眺めながら、思った。
2000年後、どうなってるだろう。
瀬戸内海はある。明石海峡大橋はなくなってるかもしれない。
見下ろす街はすべて消えてしまい、残るのは、ひょっとすると、ぼくが立ってるこの古墳だけかも。
それはそれで、「あり」だと思う。
縄文と現代の2000年をつなぎ、その時間束をゆるめたり、ひっぱったりしながら。