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「うちらにとってSC(大切にしたい精神性)って何なんだろう?」
「またヨコから来たのかい」
困ったねえという風情でおかみは言った。
ホノルル郊外、地元では人気のおでん屋。
クライアントの間宮さんが奥さんと離婚し、彼は決して望んでいない離婚で、奥さんとの思い出のおでんを今だからこそ食べたい、というので無理してやってきた。
「ヨコ」というのは異次元ホールであり、ぼくたちは日本からホノルルへ異次元移動してきた。寒い冬空の横浜が、瞬時に快晴ホノルルの空へ。
以上、今朝見た夢で、「間宮さん」という人物は実在しない。
昨夜「おでん」について話をしていたからだろう。
この世界は多元世界であることは量子論で予測されている。
では、いまぼくたちが生きているAという世界から別世界Bへ移動するには「ヨコ」、つまり異次元ホール・・・ドラえもんの机の引き出しみたいな・・・を通る必要があるんだろうか。
ぼくの仮説では、「ノー」だ。
瞬間瞬間、ぼくたちは「異世界」に移動している。特に「異次元ホール」を通る必要はない。そもそもぼくたち人間のように質量の大きい物体はニュートン力学が支配するのであり、物体として異次元へ移動することは無理だとされている。
いまぼくは出張先名古屋のホテルの部屋でMacBookAirに向かってこれを書いている。
一秒前といまとでは何も変わっていない・・・ように見える。
でも、「思い」は刻々と変わってる。そして、「世界は思いが創造する」。
ある美術館併設のレストランでお茶した。仮にWとしよう。
世界的チェーンで、ホノルルでもステーキをいただいたことがある有名ブランドだ。
オーダー取りに来てくれた男の子、「ホットコーヒー1つ、アイスコーヒー2つ、スパークリングワイングラスで1つ」を正確に受け取れない。最後のスパークリングワインはメニューに載っているワインブランド名でオーダーしたら理解できないようだったので、「スパークリングワイン」と翻訳した。
見ると右手に包帯してる。全体の様子が「荒れた生活者」。本の一冊も読まないタイプ。
Wは有名ブランドレストランだが、「人件費を下げる」意思決定のもと、彼を雇っている。店内のBGM音量、大きすぎる。ダンスするんじゃないんだから。昼間だ。しかも美術館併設だ。語り合うにふさわしい空気を形成するのがブランドの使命のはず。
経営にはマネー、つまり物質的なお金が必要だ。これをマテリアル・キャピタルと呼ぼう。略してMC。
アメリカの新大統領とその側近の顔ぶれを見るに、彼らはひたすらMCを稼ぎ、蓄積することを最優先課題としている。思うに、現代日本の現場は、この流れと同じで、MC最優先。だから例にあげたレストランWのようになる。低い人件費、接客品質無視、顧客の滞在する空気を最高のものへと演出しようという意志、ゼロ。
一方、ビジネスと商いとの違いは、「精神的なものを大事にしているかどうか」であり、この、「精神的な資産」をスピリチュアル・キャピタルと呼ぼう。略してSC。
SCを大切にするのが商い、なおざりにしがちなのがビジネス。レストランW、SCゼロ。
「キレイゴトだけじゃ、経営は成り立ちません」
はい、その通り。
商い始めるにしても、元手が要る。つまり、出発はMC(お金)で始まる。
でもSC(精神性)がなくていいわけではない。
SCだけでMC稼ぎが二の次になり、結局やっていけなくなるのが多くのNPOあるある。
あるいは、ボランティア活動も、そうなりがち。
事業は持続可能でなければならない。そのためにはお金を稼ぐのは必要。でも十分じゃない。
必要十分条件を満たすためには、精神資産(SC)の蓄積と、蓄積しようとする意志がいる。
MCとSCは相反するわけではない。むしろ両変数の蓄積・・・積分がブランドの強みへと育つ。
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aはその時点(t)でのSCの量
bはその時点(t)でのMCの量
面積がブランドの強み資産
レストランW経営者が「SCを大切にしよう」と思ったとする。その瞬間、異次元へワープする。具体的な施策・・・ブランドミッションの見直し、社員教育への着手、店舗運営のやり直し・・・をやり始めた途端、さらに異次元へ行く。
振動数が高い次元へと上がっていく。
都度、SCが蓄積され、同時にMCも増えていく。
現代日本の現場・・・コンビニ、スーパー、ドラッグストア、ホテル(高級とされるホテルもビジネスホテルもほぼ全部)、百貨店、銀行・・・はMC最優先とする結果、SCが枯渇し、SC枯渇の影響として顧客からの愛を失い、MCを減らすという負のループに入っている。
「うちらにとってSC(大切にしたい精神性)って何なんだろう?」
という問いをみんなで議論してみると良いと思います。
その瞬間、高次元へワープできます。