シェア
キズキ七星
2023年6月2日 20:44
調子に乗った、と思った。同時に、それでいいとも思えた。彼女の喜ぶ顔を見て、僕もまた嬉しくなる感覚が手に取るようにわかる。何よりも、365日のどの日よりも楽しみにしていた日。前夜、仕事が終わってからずっと、そわそわしっぱなしだった。普段は昼からの仕事で11時ごろの起床だから、早起きは辛いかとも思われたが、案外流れるように身体を起こすことができた。愛ってすげぇな、と思う。できないことが、でき
2023年4月26日 18:13
それぞれの世界から忍び寄る憂鬱から逃れるようにして、恋人とお揃いのTシャツを身に纏ってみる。貰った時の感情とか、燦々とした情景とか、彼女の笑みなんかが香ってくる。身体の奥の奥の方からぽわりと温かいものが漂ってきて、彼女のことが恋しくなっては、会いたくなる。会えない時間にどうしようもなく会いたくなるのに、ないものねだりだな、会える時間を疎かにしてしまう瞬間がある自分に後になって気がつく。バイバイと手
2023年4月23日 22:18
青々と咲き誇るネモフィラの中に、ぽつぽつと白い子たちもいた。それを見つけた恋人は、幸せを手に掴んだような面持ちで目を輝かせていた。フィルムカメラを持ってきてよかったと心の底から思った。淡い写真は、今どきスマホのアプリでも簡単に撮ることができるけれど、27枚という制限付きのフィルムに、慎重に、丁寧に、彼女の全てとまではいかずとも、僕が撮ることの出来る彼女を精一杯写すことができるから。昨年と同じ場
2023年4月20日 20:53
いくつになっても月を見上げる人間でいたい。月に情緒を見つけられるからよいとか、月の美しさを一瞥もしないからよくないとか、そういった類のものではなくて、ただ、月を見上げる人間でいたい。星でもいい。真っ暗な帳に穴が空いたように煌めく月や星をぼうっと眺め、綺麗だと、美しいと、そう思える心を持った人間でありたい。僕がいつ頃から夜空を見上げるようになったのか、それは覚えていない。いつの間にか、淡黄色に輝く彼