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日本社会のアップデートの鍵はCQ(カルチュラル・インテリジェンス)向上にあり



7月11日にCQラボさんが主催するCQ養成講座基礎コースを受講してきました。

CQ養成講座 基礎コース

10時から17時までの1日プログラムだったのですが、受講してみて、やはり、この考え方や知性は、今後、日本社会が進んでいく中で極めて重要な概念になってくると感じました。

そこで、今回は、私が受けてきたCQ養成講座の概要と私が重要だと感じたことについて書いてみたいと思います。

CQ カルチュラル・インテリジェンスとは?


CQという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
CQで調べるとこのような定義が出てきます。

「カルチュラル・インテリジェンス」(CQ)とは、文化の違いを超えて円滑にコミュニケーションを図る能力のことです。Cultural Quotientとも呼ばれ、IQ(知能指数)やEQ(感情指数)に倣ってCQ(文化指数)と略されます。企業が海外に進出し、異なる文化圏で新たなビジネスを展開する際、グローバルマネジャーに必要不可欠な能力の一つとされます。

日本の人事部 https://jinjibu.jp/keyword/detl/755/

CQ,まだまだ聞きなれない概念だとは思いますが、IQやEQの文化版と聞くと、なんとなくイメージが湧いてくるのではないかと思います。

IQ(知性)だけが高くても、どうやら幸せにはなれないようであるということはなんとなく多くの人が感じているのではないかと思います。

そのような中で、知性以上に大切な能力として、EQ(感情知性)という概念が出てきました。
たしかに我々、人間は感情で動く生き物です。
対自分においても、対自分が関わる周囲の人においても、この感情を上手に取り扱えるかどうかが生みだす影響というのはとてつもなく大きいと言えるでしょう。

そして、同時に、我々、人間は、他者と関わることなく生きていくことは難しい存在です。

その他者と関わっていく中で、他者が持っている文化背景を理解しながら、より上手に他者と関わっていくことができるような知性、技術、あり方もまたとても重要な要素になってくる。これがCQの根っこにあるものです。

なお、こうなってくるとCQをいつ誰が考えたのかというのが気になっているかと思います。検索すると以下のような表記がありました。

CQ という言葉の由来は?

文化指数 (CQ) は、2000年代初頭に Christopher Earley と Soon Ang によって初めて使用されました。同時期に行われた David Thomas と Kerr Inkson の研究により、文化的知性の全体像が明らかになりました。Ang と Linn Van Dyne は、この研究を発展させ、研究に裏付けられた異文化間のパフォーマンスを測定する方法として、CQ スケールを構築しました

https://asana.com/ja/resources/cultural-intelligence

2000年代初頭とありますから、今から約20年前に生まれた概念ということになります。

ちなみに、気になったので調べたところ、IQが生まれたのが1905年だそう。もう120年くらい前なんですね。

そして、EQが1990年だとのことでした。約35年くらい前。

CQはさらにそこから10年程度経って生まれた概念ということになります。

なお、同じページに以下の様な表記もありました。

2015年、David Livermore は、Ang と Van Dyne が開発した CQ スケールをさらに発展させた『Leading with Cultural Intelligence』を発表しました。Livermore によると、文化的知性には大きく分けて 4 つの要素があります。

CQ 動機: 多様な文化的状況の中で効果的に役割を果たす能力に対する自信を表す。
CQ 知識: 文化間の類似性と相違性に関する理解。
CQ 戦略: 文化的に異なる経験をどのように理解し、処理するか。
CQ 行動: 異文化に合わせて、言語や非言語での行動を適応させる能力。

CQ が高い人は、4 つの能力をすべて持ち合わせています。自分の CQ を測るためにテストや自己評価を受けることができますが、このスキルは IQ などの他の知能のように数値で表されるものではありません。どちらかと言うと、CQ は他のソフトスキルと同じように、人生をかけて身につけるべきスキルなのです。

https://asana.com/ja/resources/cultural-intelligence

CQは、動機、知識、戦略、行動の4つの要素で考えられると。

たしかに、異なる文化の人とコミュケーションをとっていこうとすると上記の4つが重要になってくるというのはとてもよく実感できます。

その際、上記にあるように、CQはIQのようにその高さを数値で表すようなものではないのだそう。

ただ、数値化しなくても、周囲の人の顔を思い浮かべてみたり、自分自身の状態を考えてみると、高い、低いと表現できる部分はあるなということを思いました。

CQはIQのように数値では表さないのだそうなのですがCQのウェブ診断テストがあります。

私も今回の講座の受講にあたり、その診断テスト(CWQ)を受講し、以下の様な回答が返ってきました。

10分程度、質問に答えると、上記のような診断結果が届きました。

CQの講座にて解説がありましたが、CWQは自分がどうありたいかという願望が出てきやすいので、あくまでも1つの結果とし、この結果にどのような解釈をもつと良いかを考えていくと良いのだそうです。

なお、CWQのWがなんの略なんだろうかというのが気になります。
調べてみたら、以下の略だとのこと。

CWQ (Hofstede Culture in the Workplace Questionnaire) とは
社会心理学者であり文化人類学者でもある、故 ヘールト・ホフステード教授 (Prof. Geert Hofstede) が開発した異文化のディメンションを測定するプログラムです。ホフテードはこの研究領域における第一人者であり世界的な権威です。彼が発見した国文化のディメンションは、経営学を始めとする広範囲な学問領域で活用され、ビジネスの現場においても、海外赴任者研修やグローバルマネジメントのコンサルティング等で幅広く利用されています。

https://www.humanexus-lab.com/tools/cwq

Hofstede Culture in the Workplace Questionnaireの略だそうなので、ホフステードの職場の文化に関するアンケートといったところでしょうか。

CQやCWQといろいろとあって煩雑だなという気持ちになってきますが、この手のものは、複数の人たちが前の研究を土台に協力を重ねて出来上がるものですし、作った人たちの版権の問題などもあるのでしょう。
どうしても煩雑にならざるを得ないのではないかと想像します。

そして、このCWQの土台になっているのが、ホフステード教授が提唱する6次元モデルです。(さらにいろいろと出てきた笑)

この6次元モデルについては、聞いたことがあるという人も少なくないのではないかと想像します。

実は私もCQについて知ったのは最近だったのですが、この6次元モデルについては、何年も前からいろいろなところで耳にしていて、その存在は知っておりました。

6次元モデルについても紹介しておきます。

ホフステードの6次元モデルとは

ホフステード博士がつくった国民文化の違いを相対的に比較できる指標を「ホフステードの6次元モデル」といいます。
これは、各国の価値観の違いを理解するためのツールです。

異文化理解に欠かせない指標「ホフステードの6次元モデル」とは<6次元モデル①>https://note.com/cqlabcom/n/na8efaa0d2030

ホフステード博士は、人間社会にある普遍的な6つの課題に注目しました。
それが、6次元モデルのベースとなる以下6つの次元です。
1.権力格差
2.集団主義・個人主義
3.未知への対応
4.女性性(生活の質)・男性性(達成志向)
5.過去現在未来への対応
6.人生の楽しみ方

異文化理解に欠かせない指標「ホフステードの6次元モデル」とは<6次元モデル①>https://note.com/cqlabcom/n/na8efaa0d2030
異文化理解に欠かせない指標「ホフステードの6次元モデル」とは<6次元モデル①>https://note.com/cqlabcom/n/na8efaa0d2030

前回のエントリー「なぜ心理的安全性向上施策が日本の組織でうまくいかないのか? 「異文化理解力」から考えるその難しさと、対応のポイント」では、エリンメイヤーさんのカルチャーマップを紹介しました。

ホフステードの6次元モデルでは、カルチャーマップとはまた別の切り口から、文化の比較を行っています。

6次元モデルとカルチャーマップの対比で言えば、権力/不平等への対応とリードや、社会と個人の関係性と信頼のところ、過去現在未来への対応と、スケジューリングのところなどを中心に重なっている部分がありそうです。
ただ、それぞれ言及していない点もあり、整理の仕方が異なっていて、それが面白いですね。

ホフステード博士について

こうなってくるとホフステード博士というのがどんな人なのかが気になってきますので、簡単に紹介しておきます。

こんな顔をされている方だそう。いつか一度、会ってお話を聞いてみたいと思っていましたが、残念なことに2020年に亡くなられていました。

ヘールト・ホフステード博士は、職場における価値観が文化によってどのような影響を受けるかについて研究し、世界で初めて各国の国民文化の価値観を視覚化したオランダの社会心理学者です。

ホフステード博士は、文化を「ある集団と他の集団を区別する心のプログラム」と定義しました。
文化の表出レベルの、最も核となる部分にあるものが「価値観」で、価値観は人生の早い時期に無意識のうちに形成され、内面化されます。
自分自身でも意識せずに存在し、変革が難しいものです。

異文化理解に欠かせない指標「ホフステードの6次元モデル」とは<6次元モデル①>https://note.com/cqlabcom/n/na8efaa0d2030


ホフステードの6次元モデルはどのようにして生まれたのか?


この手の指標を見ると、これがどうやって作られているのかが気になってきます。

6次元モデルの面白いところは、同じ会社(IBM社)で働く社員を国ごとに比較して、生み出したのだそう。

たしかに、この環境にいれば、国ごとの違いを大きく感じ、比較して整理したくなるだろうなと思いました。

ホフステードの6次元モデルは、1967年にIBMヨーロッパの人事リサーチマネージャーだったホフステード博士が設計した従業員意識調査をきっかけに生まれました。
この調査は1967~1970年にかけて11万6,000人のIBM社員を対象に72ヶ国、20言語で実施されました。
そこで、ホフステード博士は従業員の意識や行動の違いが国の文化の違いによって起きていることを発見したのです。
その後、ホフステード博士はこの研究を続け、最初の著書『Culture’s Conseduance』のなかで国の文化を初めてスコア化しました。

https://note.com/cqlabcom/n/na8efaa0d2030

なお、もっと詳しく知りたいという方はこれらの本を読んでみると良いかと思います。

多文化世界は、4000円以上しますが、図鑑のようなところがあり、私は繰り返し、気になった時に、その軸でどこの国がどこに位置付けられているのかを眺めてはニヤニヤしています笑

ということで、前置きがだいぶ長くなりましたが、(なんと前提で五千文字を超えていました笑 それだけ本エントリーを書くにあたり、前提としておかないと理解できない要素が多々あったということですね)いよいよここからが私の受講にあたって考えていたことや受講してみての感想になります。

なぜ私がこの講座を受講したか?


まず、受講の理由は2つあります。

1つ目は、最近D&Iを推進したいという企業からの仕事の依頼がとにかく増えているからです。

D&Iを推進しようとすると、1人1人の違いを否定することなく、上手に受け入れること。そして、可能であれば、その違いがあるからこその新しい価値の創造へと繋げていくようなありようが求められます。

そのような中で、私自身がもっともっとこの領域について勉強しないといけないと思ったからです。

もう1つの理由が、仕事においても、趣味においても、日本社会の文化の特徴や海外の文化の特徴についてもっと理解をし、深く味わえるようになりたいと思ったからです。

最近、バードウォッチングにハマっているのですが、視界に入ってくる鳥たちを眺めては、鳥の図鑑を通じて調べていくほどに、同じ様な形や大きさをしている鳥にしても、何を食べるのかとか、どのようにカップリングを行うものなのかとかが全然違ってくることを知り、同じような鳥にしてもなんと違うものなのかとその違いの大きさには驚くばかりです。

そして、同じ様な種にも関わらず、これらの違いがどのようにして生まれてくるものなのかが気になってきます。

文化についても、それと同じ様に、もっともっと深くその性質を理解して、味わえるようになりたいという思いがあります。


今回の講座の構成

今回の講座は基礎講座ということで、以下の様な構成になっていました。

・CQの概要
・6次元モデルの概要
・各次元ごとの説明
・各次元ごとに文化のすれ違いの事例を土台にしたロールプレイ
・まとめ

座学的な部分に関しては、本に書いてある部分の説明だったので、さほど、驚きはなかったのですが。
文化のすれ違いの事例土台にしたロールプレイの部分は本を読んでいるだけでは全く理解できなかった部分だったなと思います。この講座を受講しにきて良かったと思いました。

今回、学んでみて一番意外だったこと

今回、学んでみて一番意外だったのは、文化の違いを乗り越えると言ってはいますが、最終的には、異なる文化を持つ人とコミュニケーションを取ろうとした際に最も大きな影響を生み出すのは、文化の根っこにあるその人の感情の部分であるということです。

これが先ほども書いたロールプレイを通じて、初めて理解できた部分でした。

たとえば、ロールプレイの中では、6次元モデルに合わせて日本の人と、海外の人とで話し合いお互いに譲れない部分が出てくるという場面が用意されていました。

ここの海外の人というのは、アメリカでも中国でもロシアでも構いませんし、なんなら価値観が大きく違えば日本人でもOKです。

その異文化間でのコミュニケーションを取ろうとすると、「この国の人はこういう文化を持っているから」と頭で想像をしながら、歩み寄ろうとするわけですが。

なかなか頭で考えて言葉を生み出すだけでは、相手に受け取ってもらえず、うまくやりとりができないというのが頻繁に起こっていきました。

例えば、「集団主義」とか「不確実性の受容」といったように、6次元モデルに沿って、与えられた役割の中で、その人の心情を想像し、演じています。

そうすると、その人の気持ちを想像すると、たしかに受け入れることができないということに気づいていくのです。

自分が受け入れられない要因を探っていくと、言うなれば、そこにあるのは文化の違いというよりは、その人の持つアイデンティティの部分になり、これを受け入れてしまうと、自分が自分ではなくなるような感覚になっていくことがありました。

これは、文化と言えば文化なんだけれど、文化の中でもより深いところにあるもので、文化という言葉だけを聞くと、勘違いが生まれる要素になるなということを思いました。

先ほど、文化の根っこにあるその人の感情の部分と書きましたが、感情といえば感情ですが、言い方を変えれば、自分の存在価値とも言えるかもしれません。
そして、このすれ違いと、それを乗り越えようとした際の抵抗はロールプレイでもそうですが、これは現実空間でも同じ様なことが起こっているなと思いました。

今回、学んだことで他者に共有したい考え方


考えてみれば、最近、ニュースでよく目にする政治の問題も、地域の問題も、また業務上遭遇する組織の問題も、分かり合えないのは、これが要因であることが見えてきました。

たとえば、ライドシェアの問題がわかりやすい例に挙げられるでしょう。
ここ数年、さっさと解禁してほしいと思っている人たちと、絶対に解禁できないという人たちとでずっとすれ違っています。

私はこれまで、これは損得の問題が大きいのだろうなと思い、タクシー業界側が経済的になんとかやっていけるものを考えることが重要であると考えていました。

たしかにそれは1つの要因として間違いなく影響があるのでしょうが、おそらくそれは表面的な要因の1つに過ぎず。

問題の本質は、ライドシェアが解禁されてしまうことで自分達の存在意義や、アイデンティティが揺らいでしまい、そこに対して抵抗を示しているのだろうなというのが今回のプログラムでよくよく想像できました。

前々からわかっていたことではありますが、この問題を乗り越えるのは全くもって簡単な話ではなく、その人たちのアイデンティティをシフトするなどして、存在価値が保たれると感じられるような何かを作り出さないと、前に進むことはできないのだろうなということを思いました。

また、今回の講座でも言及されていましたが、日本の文化の最大の特徴として、不確実性に対する受容度が世界でも突出して低いのだとのこと。

0〜100の中で日本は92とあり、世界でもトップクラスなのだそう

アイデンティティの問題とともに難しいのが、この日本の世界でも突出したリスク回避志向で、現状、あちこちで一向に前に進まない現象がみられているのは、ここの要素とうまく関わっていく必要があるのだなということを強く実感しました。

今回の受講を今後、どのように活かしていきたいか?

私の最近のテーマに、いかに昭和の組織から令和の組織へとアップデートしていくかというものがあります。

言い方を変えれば、株主資本主義から、マルチステークホルダー資本主義へのシフトとも表現できます。

その中で、一向にアップデートが進まず、どうしたものかと日々、悶々としていたわけですが、今後の重要ポイントとして理解したのは、異なる文化、意見を持っている人の気持ちや置かれている状態を想像するだけではなく、その人の存在意義のレベルまでを感じながらコミュニケーションをとることになってくるのだろうなということを思いました。

この講座では、「異文化理解や多文化共生においては、異なるメガネをかけてものを見てください」という表現が繰り返しなされていました。
その表現に重ねていえば、異なるメガネというか、Apple Vision Pro のようなVRゴーグルをかけて、その人の視界だけでなく、脳や深層心理までを想像するようなコミュニケーションが取れるかどうかなのだろうなということを思いました。

これ、言うのは簡単なものの、実際にやるのはとんでもなく難しい話だなと思いつつ。まずは身体感覚や身体イメージを持つことが、その道を進む第一歩になるなと思いますので、長い時間かけてこの道のりを進んでいけたらと考えています。

今後、私自身のCQの向上・開発とともに、周囲の人々のCQの向上・開発に向けて何かを生み出せるように取り組めるようがんばっていきたい。

ということで、今日も素晴らしい学びの機会をありがとうございました。

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きづきくみたてnote 森本康仁
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