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『Pathu Thala』 (主演:Silambarasan TR,Gautham Karthik)
2023年3月30日公開。
2017年に公開されたカンナダ語映画『Mufti』のタミル語版リメイクとのこと。
ここ1年、南インド映画をコツコツと見てきたわけだが、どの映画もストーリーの軸となる部分が似ていて、最後は暴力が解決するという展開が透けて見えるので、最近は南インド映画欲が薄くなっていた。
要は、お決まりの展開に少し飽きていた。
この映画を見ようと思ったのは、街中のポスターにA.R.Rahmanの名前を見つけたから。
チェンナイ出身のA.R.Rahmanは、『スラムドッグミリオネア』の主題歌でアカデミー賞を受賞した、インドを代表する音楽家である。
そんな彼が劇中歌を担当しているということは、そうとう気合が入った作品に違いない。
ざっくりとしたあらすじ
タミルナドゥ州首相の失踪事件を調査するため、秘密捜査官のシャクティベル(Gautham Karthik)は、州南部を拠点に構えているギャングスターAGR(Silambarasan TR)の手下になりきって潜入捜査する。しかし、シャクティベルはAGRが事件に関与しているという証拠を集めることがなかなかできない。AGRの信頼を得るために努力するシャクティベルは、捜査の中で、民衆から恐れられているAGRの裏の本性を知り、次第に彼に惹かれていくのだった。
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右がギャングスター役のSilambarasan TR
この映画のメインキャストはSilambarasan TRということになっている。
表向きは極悪非道、でも裏では私財を投げ打って人道支援しているというギャングスターの役柄だ。
しかし、彼がスクリーン上に全身を現すのは、上映開始から1時間近く経ってからのこと。
この映画の上映時間は2時間半で、その真ん中に休憩が入るのだが、なんと休憩時間の直前まで全身が明らかにならない。
前半部分では、目だけのカットやバックショット、彼の姿が映るもピントが合わないショットが随所に盛り込まれ、その度に観客は口笛を飛ばす。
でも、なかなか全身がくっきりとスクリーンに映らない。
散々焦らされたところで、ようやく彼の姿がバッと大映りになる。
彼の全貌が明らかになった時の、劇場内の盛り上がりたるや。
この「焦らし芸」は南インド映画でよく見られるものだが、主役の登場を1時間も引っ張るのはなかなか気合が入っている。
他にも目を惹く演出がいくつかあり、インド映画の娯楽力の高さを痛感した。
この映画は初日にして、1億ルピー超(約2億円)の売り上げを記録し、今年を代表するタミル映画の一つに名乗りを挙げているとのこと。
さて、楽曲担当のA.R.Rahmanといえば、今年は他にも注目作品の公開が控えている。
昨年にPart-1が公開された、全タミル人待望の圧倒的スケール歴史映画『Ponniyin Selvan』だ。
Part-2が4月末に公開されるらしいので、楽しみに待つ。