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『Vettaiyan』

監督:T. J. Gnanavel
出演:Rajinikanth、Amitabh Bachchan、Fahadh Faasil、Rana Daggubati、Manju Warrier、Ritika Singh、Dushara Vijayan など
公開:2024/10/10

公開されてすぐに観に行ったが、感想を書くのを忘れていた。

ざっくりあらすじ
ラジニカーント演じる警察官Athiyanは、エンカウンターの使い手。とある凶悪犯罪の捜査中、無罪の青年を犯人だと誤解し、射殺してしまう。なんやかんやあって無事に真犯人を捕まえることはできたが、この一件を機に、Athiyanはエンカウンターではなく、法による正義を重んじる決意するのだった。

さて、エンカウンターとは何ぞやということだが、南アジア(特にインドとパキスタン)特有の用語らしい。
以下、Wikipediaの英語記事をAIで自動翻訳したもの。

「エンカウンター・キリング(encounter killing)」とは、南アジアにおいて警察や軍隊が行う法外殺害を指し、通常は自己防衛として説明されます。主に、警察がギャングやテロリストと遭遇し、その際に発生した銃撃戦中に相手を殺害することが含まれます。これらの事件は多くの場合、犯罪者が警察官の銃を奪おうとしたとされ、その結果発生した銃撃戦として説明されます。この「エンカウンター」という用語は、20世紀後半に広く使用されるようになりました。

Wikipediaより

インド映画を見ていると、警察官が犯罪者をガンガン殺していくシーンがよくあって違和感を覚えていたが、(映画ということで誇張されているとはいえ)どうやらこういった現実的な事情が背景にあったようだ。

楽しそうに犯罪者を殺すラジニカーント

現実世界では、非武装だったり、自首したりしている犯罪者に対してもエンカウンターが発動される事例があり、警察官による権力の濫用が問題視されているらしい。
そういう行き過ぎた「フェイク・エンカウンター」を監視するために、インドには国家人権委員会(NHRC)が設置されている。

本映画では、そのNHRCの判事をアミタブ・バッチャンが演じている。
そう、この映画はラジニとバッチャンという超人気ベテラン俳優が共演している作品なのだ。
なお、意外にも、この映画がバッチャンのタミル映画デビュー作らしい。

南北インド映画界の二大巨頭

『Vettaiyan』では、ラジニカーントやバッチャンの他、ファサド・ファーシルやラーナー・ダッグバーティといった主演クラスの俳優が脇を固めており、マラヤラム・テルグ・カンナダ映画界などから広く豪華キャストを集めている。
ただ、実際のところは、ここまで出演者にこだわる必要あったか?というのが率直な感想。
マンジュ・ウォリアーも役不足な感じがした。終盤に一瞬だけ見せ場があったけど。

例えば豪華俳優の共演といえば、『Kalki 2898 AD』なんかが記憶に新しいが、あれは「マハーバーラタ」を題材にした壮大なSF映画だったから、キャストにこだわるのも理解できる。
何なら、あれだけの出演者を揃えないと描けないような大作だったと思う。

しかし、これは硬派な社会派映画で、キャストを揃えすぎて逆にゴチャゴチャしてしまったような気がした。
内容も「エンカウンターの是非」を問うような作品かと思いきや、警察官の汚職や教育業界の腐敗など、メインテーマが絞り切れていない印象。
エンカウンターの名手ラジニと国家人権委員会の権化バッチャンの対立軸もパッとしないものだった。
ラストで、ラジ二とバッチャンがハグをするシーンがあったのだが、監督はこの場面を撮るためにこの映画を撮ったのでは?などと思った。

ところで、タミル映画は社会的な題材を扱う作品が多いような気がする。
自分が知らないだけかもしれないけれど、他言語で制作される映画に比べて、神話的なSF映画とか現実離れしたギャング映画が少ない印象を受ける。
タミル人の好みなのかな。

最後に一人だけ出演者の紹介。
ラジニの相棒を務めたファサド・ファーシル。通称、ファファ。
個人的にこの俳優が結構好き。
剽軽で胡散臭いが、重要な役回りが多いイメージがある。

映画内ではいつも派手な柄シャツを着ていたが、とても似合っていた。

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