『Jawan』
King of Bollywood こと シャー・ルク・カーン(SRK)の新作『Jawan』が、9月7日に公開された。
今年の1月に『Pathaan』が公開されており、2023年に公開されたSRK主演作品としては2作目ということになる。
SNSでは「『Pathaan』越えの傑作」なんて映画レビューがちらほら見られ、実際に興行収入でも『Pathaan』を抜くのではないかと目されている。
インド映画は全体的に内容が盛りだくさんな傾向にあるが、この作品も例にもれず、最初から最後まで怒涛の展開だった。
2話や3話に分割してもおかしくない分量をむりやり3時間弱にまとめ上げた感じで、観終わった後は映画の最初の方がどんな感じだったか全く忘れてしまっていた。
日本には数十年スパンで連載される有名漫画があったりするが、インド映画はそれを数時間のうちに詰め込んでしまう強引さがあるような気がする。
だからインド映画を観ると、ただ観ているだけなのにかなり体力を消耗する。
3時間では処理できないレベルの情報量で殴り掛かってくるし、乗っているアトラクションがメリーゴーラウンドだと思っていたらジェットコースターだったというくらい展開の緩急がエグい。
この映画はヒンディー語映画(タミル版、テルグ版も同時公開)だが、監督のAtleeはタミル映画界の出身で、今作が彼にとって初めてのヒンディー語映画ということになる。
そのため、この映画にはタミル映画界で活躍する人が多く携わっている。
まずは主演女優の Nayanthara 。
バンガロール出身の彼女は、タミル映画を中心に南インド映画に多数出演している。
次にヴィラン役の Vijay Sethupathi 。
タミル映画を中心に話題作に多く出演する彼は、圧倒的な演技力で多くのファンを抱える。
そして最後に楽曲提供の Anirudh 。
まだ32歳の彼はすでに多数の受賞歴を誇る人気アーティストで、近年で話題になっているインド映画の大半に携わっているといっても過言ではない。
というわけで、SRK主演でありながらタミルとの合作のような本作だが、それゆえにかなり「南っぽい」展開や演出が多かった気がする。
正面から社会問題に切り込んでいく泥臭さ、暴力に次ぐ暴力、主人公の神話性など。
特に、主人公であるAzaad Rathoreの生い立ちをたどるシーンは、かなり神話っぽかった。
南インドの映画には神話をなぞっているようなシーンが多く、結果として、主人公に圧倒的なカリスマ性が与えられることが往々にしてある。
それはインドの人々が豊かな神々の物語を持ち、今でもそれらを身近に感じながら生活しているということの表れであるように感じる。
この「神話の再現」というのは、インド映画の大きな特徴であるし、インド人にしか表現できないことだと思う。
1月に『Pathaan』を観たときは、「インド映画は北と南で映画のテイストが全く違うんだな」と思ったのだが、『Jawan』は北と南が良い感じで融合した作品だったと思う。
今、『Pathaan』は日本で一般公開されているらしいので、『Jawan』もそのうち一般公開されることになると思う。
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