古舘伊知郎21年ぶりのプロレス実況は、解説者がポイントである
「古舘伊知郎が21年半ぶりのプロレス実況」というニュースを聞くと、やはり心がザワザワする。
今回は販促イベントとはいえ、たしかに古舘さんがプロレスの試合を実況するのは、1998年4月4日のアントニオ猪木の引退試合以来だ(2017年1月の『豆腐プロレス』の実況はドラマなので除外)。
試合をしたレスラーたちは感激だったと思う。収録を終えた獣神サンダー・ライガーのツイッターには、1971年生まれの“古舘世代”天山広吉の笑顔が投稿されている。
そして、古舘伊知郎21年ぶりのプロレス実況で最も意味があったのが、ライガーが解説者として隣に座ったことだと思う。
かつて、ライガーが素顔だった時代に20歳の山田恵一をモデルにした『スープレックス山田くん』という漫画があったからだ。
実は、この漫画の監修を手がけたのが、古舘さんなのである。漫画には、山田くんがメキシコで入門を志願する場面も描かれている(ほんの少しだけ掲載)。
そして、山田と古舘との関係については、ライガーも自伝の中で言及している。
あの漫画は古舘さんも監修として関わっていらして。僕が山本さんと初めてメキシコで会ったときに、現地に古舘さんも実況で来ていらしてたんですけど、あとになって「あのとき、メキシコに来てたのは山田くんだよね?よかったよね、デビューできて」って言っていただいて。いまでもお会い機会があると、そのときの話になりますから。
山田恵一がヤングライオン杯優勝を決めた後藤達俊戦をはじめ、UWFとの5対5対抗戦での高田伸彦戦、アントニオ猪木との初タッグを結成した木戸修&高田伸彦戦など、山田にとってターニングポイントとなった試合の実況は、すべて古舘さんによるものだ。
古舘さんは山田の将来性を早くから評価し、雑誌のインタビューで期待の選手について尋ねられると、メインイベンターと一緒に「山田」の名前を挙げていた。
期待の人は藤波、木村健吾、ストロング・マシーン1号、2号、カウボーイ・ボブ・オートン、若手の山田ですね。※原文ママ
かつて、古舘伊知郎の放送席の相棒といえば、山本小鉄さんであった。しかし、故人となってしまった今、メキシコで小鉄さんによってプロレス入りを許された少年が、小鉄さんの代わりを務めるというのも実にドラマがある。
実況でどんな古舘節が飛び出したのか、そして、ライガーとどんな掛け合いをしたのか気になってしかたがない。ちなみに、前哨戦とも言える、明治プロビオヨーグルトPA-3のCMで披露している古舘さんの実況を見てはあれこれと想像しているのである。
参考文献・資料
古舘伊知郎・国友やすゆき『スープレックス山田くん』(1987年、徳間書店)
獣神サンダー・ライガー『獣神サンダー・ライガー自伝(上)』(2017年、イースト・プレス)
『City Road』1984年11月号(エコー企画)
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