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【旧ジャニーズ事務所】FAMILY CLUB会員規約を読み解いてみた
利用規約ウォッチャー みなしボウイです。
故ジャニー喜多川氏の性加害問題を始めとする旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)に関する件ですが、ご周知の通り、所属タレントのうち希望者は新会社であるSTARTO ENTERTAINMENTへ移籍する措置がとられています。
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本記事においては便宜上、旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)を「旧会社」、STARTO ENTERTAINMENTを「新会社」と表現します。
所属タレントについては、旧会社時代よりファンクラブが運営されており、活動報告、ライブチケットやグッズの販売など、ファンへ向けたサービスが展開されてきました。ファンクラブの会員数は非公表であるものの、非公式には約14百万人(各アーティストファンクラブの合計)と言われています。
今回、「FAMILY CLUB会員規約」をウォッチしていきます。重要な4つのポイントに注目して規約をウォッチしていければと思っています。
安心安全にサービスをご利用頂けるポイントになりますので、最後までよろしくお付き合いください。
運営会社
FAMILY CLUB会員規約第1条に、ファンクラブの目的が記されています。
ファミリークラブ (以下「ファミリークラブ」といいます)は、アーティスト ( 個人またはグループ、以下「アーティスト」といいます) 及びジュニアを応援する会員と株式会社SMILE-UP.(以下「当社」といいます)によって構成され、会員がアーティスト及びジュニアを応援することを目的とします。 当社は、ファミリークラブの事務局として、アーティスト及びジュニアのファンクラブを運営します。
各メディアでも話題になっていますが、FAMILY CLUBの運営は、旧会社によって現在も行われていることになります。この状態が過渡的なものであるかはわかりませんが、この記事の後半に考察をまとめていますので、そちらもご覧ください。
チケットの転売禁止
FAMILY CLUB会員規約では、チケットの転売禁止について、会員遵守事項そして禁止事項にて厳しく定めています。
1. 会員は下記の条件を全て充たすこと及びこれらを遵守することを保証するものとします。
(中略)
(8) 各アーティスト等が出演する公演等の主催者から入手し、または入手しようとするチケットもしくはチケットに類するものを、第三者に転売または譲渡し、あるいは転売または譲渡しようとしたことがなく、またこれにかかる行為をしないこと。
1. 会員が、以下に定める行為をすることは禁止します。
(中略)
(3) 株式会社ヤングコミュニケーション、FAMILY CLUB online、その他アーティスト等が出演するコンサート及び舞台等の主催者並びにプレイガイドにおいて制定するチケット販売規約に違反する行為
株式会社ヤングコミュニケーション…旧会社の関連企業で、コンサートや舞台などを主催する会社。
なお、2019年6月14日から「チケット不正転売禁止法」が施行されており、人気のコンサートや舞台、スポーツイベント等のチケットの高額転売等は、禁止されています。
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アーティストの権利を侵害する行為の禁止
ここ最近、芸能人やスポーツ選手に対する誹謗中傷等が問題となることがありますが、FAMILY CLUB会員規約においては禁止事項として定めがあります。
1. 会員が、以下に定める行為をすることは禁止します。
(中略)
(8) アーティスト等、アーティスト等の関係者 (アーティスト等の家族や当社スタッフ等を含む)、ファンクラブの他の会員を含む第三者、当社及び関連企業の財産、名誉、信用、プライバシー等の権利を侵害する行為、不利益を 与える行為、その他迷惑行為
(9) 当社の承諾を得ることなく、アーティスト等またはアーティスト等の関係者の写真・動画等を撮影・録音・録画する行為
(10) アーティスト等またはアーティスト等の関係者に対する付きまとい、 誹謗中傷行為等、あるいはアーティスト等、当社及びその関連企業に連絡や面接を強要する行為
(11)アーティスト等、アーティスト等の関係者またはファンクラブの他の会員を含む第三者に対して危害を加え、または危害を加える旨を告知するなどして、 困惑・畏怖させる行為
(12) 各種交通機関 (航空機、電車、船舶、 乗用車を含むがこれに限らない) または公共の場においてアーティスト等を追尾するなどして、 アーティスト等、アーティスト等の関係者またはファンクラブの他の会員を含む第三者の通行を妨げ、もしくは進路を妨害する行為、その他各種交通機関の運行等に支障を生じさせる行為
考察
FAMILY CLUB(この項においては「ファンクラブ事業」といいます)が、旧会社に残っている理由は、大きく2つの理由によるだろうと思います。
事業規模の大きさ
ファンクラブ事業は、非公式に約14百万人の会員を有していますが、会員一人当たり4,000円の年会費を徴収しています。単純計算で560億円の年会費収入があります。
もちろん上記の収入が全て残るわけではありませんし、最終的にどれくらいの利益をもたらす事業であるのかはわかりませんが、毎年安定的に現金収入があるという極めて安定的な事業であることは間違いありません。事業価値としては高い訳です。
価値の高い事業を資本関係のない新会社へ移管するには、どの手法をとったとしても、旧会社にはそれなりの譲渡益を出すスキームであることが必要です。どのタイミングで譲渡価格を算定するかにもよるので、その時期を探っているものと思われます。
会員情報の取扱い
仮に、旧会社と新会社との間でファンクラブ事業の移管について合意がとれたとしてもそれだけでは移管は出来ず、会員の同意が必要となるケースがあります。
また、新会社側が個人情報のカタマリである会員情報の取扱いについて安全性を担保出来ないようでは、会員は不安を感じてしまいます。
会社の運営体制を整えている途上にあると言われている新会社が、今すぐにファンクラブ事業を行うことには時期尚早との慎重判断があるのかもしれません。
新会社が旧会社との決別を図って設立されていることから、旧会社との接点を見せたくないという事情があるのはわかります。しかし、アーティストもユーザーも基本的には継承している以上は、旧会社と新会社が手を取り合って移管をしていくということを見せていったほうが安心材料になるのではないかと思います。
新旧分離による事業再生はこれまでにも事例がありますが、そのほとんどは旧法人の経営不振によるもので、今回のような事例は珍しいと思われます。
今後の行く末を見ていきたいところです。
今回は、このあたりで終わります。ありがとうございました。
なお本投稿における、発表内容は発表者個人の見解に基づくものであり、本投稿にて取り上げられている組織及びサービスの公式見解ではありません。