002_賃貸物件

賃貸のアパートがある。
大学へと続く山道脇、奥まった側道の先に賃貸のアパートがある。

いつ建てられたかも分からない無骨で冷たいコンクリート造りの物件だ。
今は誰も住んでいないし、募集している様子もないので賃貸と呼ぶのが正しいかすら怪しい。

周囲どころか傷んだベランダまでもが雑草にまみれているが、
玄関前とそこに通じる道だけは比較的綺麗に整えられている。

ときどき郵便受けに誤ってポスティングされることがあるので、
郵便受けが溢れないよう近所の人たちが回収している。

郵便受けを外すなり封鎖するなりすれば良いのにと思うのだが、
住んでいる状態にするためにそれはできないそうだ。

溢れたときにどうなるかは誰も知らないし、誰も教えてくれない。

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