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江戸川乱歩「赤い部屋」読んだ感想・思ったこと

あらすじ
幻想的な雰囲気のある「赤い部屋」では、猟奇クラブが開かれている。ある日、新期会員の男が自身の犯した殺人について語る。99人殺したというその男の手口とは。語り終えたその後に一体何が起こるのか。

「異常な興奮をお求めて集まった七人のしかめつらしい男が(中略)今晩の話し手が、何事か怪異な物語を話し出すのを、今か今かと待ち構えていた」

 乱歩は猟奇と幻想が織りなす探偵小説が持ち味だ。物語の書き出しにも猟奇クラブに赤の天鵞絨や蝋燭で飾られた部屋だなんてもう雰囲気満点だ。

 「赤い部屋」では手段が確実ではなく偶然性によって相手を死に至らしめるプロパビリティの犯罪が取り扱われている。

善意を装った悪意的殺人というのは昔の作品でありながら斬新な発想だ。
現代の法においても裁ききれないような殺人が小説の中で記述してあり、悪魔的なそのやり口に、小説が発表された当時から今までにどれほど恐怖を与えたのだろう。

 最後に新規会員Tが種明かしをする文章は私にとって興醒めだった。「人間椅子」を読んだ際にも同じように感じたのでこれは乱歩の特徴なのかもしれぬが。

種明かしの解説が妙に説明らしく饒舌なイメージをもってしまうのだ。それは物語の登場人物という枠を超えて乱歩自身が読者に向かって話しかけてきているのを感じる。
 
 少し話がズレるが、昔の漫画作品内に作者が登場する事や登場人物が作者のことや「読者のみんな」などと口にしていると少し残念な気持ちになる。もちろんそれ含め文化というものもあって受け入れるし愛している。
要は個人の感性的なものなのだろうが、作り手の存在を知ることで「物語」という世界に入り込めないというか…私自身が頑固であるため作者の手のひらで転がされているにすぎないと知るのがなんとなく嫌なのである。もちろんそういうことが効果的になる作品だってある。

 しかし、やっぱり乱歩の小説は面白い。コンパクトな構造でありつつも狂気、夢想な小説はいつだって色褪せぬ新鮮さを持っている。その乱歩の文才と世界になんだかんだ転がされてしまうのであった。


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