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筋トレを5年続けたら女にモテるようにはならなかったが近所のじいちゃんには褒められた

 私はかれこれ5年間筋トレを続けている。平日は自宅で夕食前に、休日は朝にジョギングがてら公園へ出向いて。メニューは大体が懸垂や腕立て伏せといった自重トレーニング、5年も続ければ体つきもがっしりしてきたし、マッスルアップと呼ばれる鉄棒にぶら下がった状態から上半身をバーの上まで引き上げる技もできるようになった。

 夏、肌を露出する機会が増える時期が近付くと、「筋トレをして異性にモテる体を手に入れよう」といったニュアンスの文言を目にする。フィットネス関連の宣伝広告だったり、インフルエンサーの投稿だったりさまざまだ。
 その文言が正しければ、5年間筋トレを続けている私は令和の光源氏になれるはずだが、もちろんそんなことはなかった。5年前も現在も何も変わらない。モテるためには、身だしなみ、所作、話し方などもっと他に改善するべきことがある。

 だからといって、私はこの現実を嘆きたいわけではない。元々、筋トレを始めたきっかけは健康のためであり、5年続けた成果ははっきりでているので満足している。しかし、他人から全く反応がないというのも寂しいと思っている。

 そんなとき、嬉しいことが起きた。先日、休日だったのでいつものようにジョギングで公園へ向かい筋トレをしていると、一人のおじいちゃんが通りかかった。私は雲梯を使ってマッスルアップをしている最中で、おじいちゃんは足を止めて私の様子を見ていた。
 子供はまだ来ていない時間を選んでいるとはいえ、大人がアスレチックを独占している状態だったのでお叱りを受けるのかと思ったが、おじいちゃんから発せられた言葉は嬉しいものだった。

 「兄ちゃんすごいな!」

 筋トレを続けていて、初めて他人から褒められた瞬間である。自分の体が変わっていく、できなかった動作ができるようになっていく喜びはしっていたが、この喜びは初めてだった。
 私は、「とんでもないです」と感情を抑えて謙遜の返答をし、それを聞いたおじいちゃんは、「じいちゃんは1回もできんわ」とぼそっとつぶやいた後、スタスタと散歩の続きに戻った。
 その後のトレーニングはものすごく気分がよく、いつもより少し長めに行ってしまった。

 子供のころはちょっと頑張っただけで多くの人に褒めてもらえたのに、大人になると相当な努力をしても褒めてもらえなくなった。そんな中で、おじいちゃんから頂いた何気ない一言は、私の5年間の筋トレ生活を全て肯定してもらえたかのように感じた。

 

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