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NO.9『事件①“散らかった部屋…”part3』

前々回からの続き。ちょっと聞いて~

へっぽこ娘

翌日、何事もなかったかのように朝を迎えた。昨日のことを母はどのように思っているだろうか。忘れているのだろうかと思ったが、少し衝撃的な事件だったので、母と話すときもそのことには触れないでおこうと思い、私は腫れ物にさわるかのような優しい言葉かけを意識した。母はいつもと変わらない様子で起きてきたが、会話の中でふと思い出したように「あの人にお詫びにいかなきゃ」と昨日お世話になったおばちゃんのことを言ったので、覚えているんだなと思った。顔つきも昨日とはまったく違って穏やかだ。「今日から旅行に行くって言っていたから、帰ってきたらお礼に行こうね」と答えると母は安心した様子だった。

その日姉からグループラインが入り、昨日の一部始終を弟夫婦に報告して、思うことがあるからグループ通話をしたいとの連絡で、その晩姉と私と弟夫婦で話すことになった。姉の提案はおおよそ次の2つだった。様子を聞くと現在のショートステイが母には合わないのではないかと思われるので、違うところを探した方がいいということ。そして色々な様子から今回の原因は母が何か疎外感を感じているのではないかと思われるのでそう感じないような配慮が大切ということだった。姉は昨日帰る電車の中でこの状況を何とかすべく精一杯考えて、出した結論を共有してくれたのだと思うが、私にとってその言葉は相当厳しく心にのしかかってきた。姉の言うことは全くその通りだと思いながらも「やっぱり、全部私なんだよね。私もいっぱいいっぱいでもう限界。とても苦しい。お姉さんの言いたいことはよくわかった。私がもっと努力しなきゃだめなのよね」そんな思いが溢れてきてそれ以上聞いていられなくなり、その思いだけを訴えて電話を切ってしまった。後味が悪かったけれど、でもそれがそのときの私の正直な気持ちだった。電話を切った後、申し訳なかったなと思ったが、意外に気持ちがさっぱりしているのが自分でも不思議で、あまり時間が経たないうちに心が落ち着き、先ほどの態度へのお詫びと、できるところからやってみることを素直に姉たちにラインすることができた。そして、その日から母に疎外感を感じさせないように努力しようと思ったのだった。最近の私は、母をまったく困った人だとどこか邪魔者のように思っていた。その心が母に伝わり、寂しかったのかもしれないと自然に反省の心も湧いてくる。二度とあんなことが起こらないように、ふれあいを変えて行こうと素直な気持ちでそう思えた。この前のおばちゃんの対応も非常に勉強になった。もちろん、第三者だからこそできたのだとは思うが、あのように母をそのまま認める言葉かけができるようになれたらいいなと心からそう思った。この後、もう一つ事件がありました。また聞いてくれたら嬉しいです。

聞いてくれてありがとう。


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