鳶口明烏

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馬鹿話をしよう #「ヒトリノ夜」前編

〇馬鹿話をしよう 時間がある。馬鹿話をしよう。現代人は誰もが心に寂しさと疎外感と馬鹿話くらいは抱えている。私だって例外ではない。 時は2022年、この時はまだ新型コロナウイルスはまだ蔓延していた。石原慎太郎と安倍晋三がともにこの世を去り、10月に入ると1ドルは32年ぶりに150円を突破した、そんな年だ。IT技術を駆使し、何とか企業はこの危機を乗り越えようと模索し続けたが、「セイサンセイ」(生産性)という半ば外来語のような響きを発するだけで精一杯だった。そんなものが達成出来

    • 恋をして 仕事して

      「恋をして 仕事して 歴史刻んだ地球・・」とはモーニング娘。の歌。 バリバリのダンスナンバーに仕上がったのはダンス☆マンによる所業だ。彼のおかげで世に多くのモー娘ファンを生んだわけだ。 しかし確かこの曲がリリースされたのは20世紀末の就職氷河期真っ只中。企業はバブル経済崩壊後の自己保身のために新規採用者の募集を絞り、多くの新卒者が職業にありつけなかった時代だ。 そんな冷え切った時代においてまぁこんな歌などをリリースする等、「なんとまぁ能天気な・・」と人はいうことだろう。確かに

      • 短編「傘」

        この日はいまだ暑さと乾いた風が残る9月であった。 夕暮れ時、帰路。私は喉に痛みを感じ首元をさすった。 ちょっと酷使しすぎたな・・。 誰だってともに時間を過ごす人が無口なら、気を遣ってなるべく空白を満たそうとするだろう。ましてやそれが気になっている異性ならなおさらのことだ。そうして私の口は酷使された訳だ。 帰りの電車には思考を放棄したような時間が流れている。夕暮れが次第に暗闇へと変わっていく時間であった。車窓には郊外の背の低い家屋が立ち並ぶ。そろそろ夕飯時か。そう思い窓の中

        • はじめての投稿

          ふと、このnoteを始めることになった。 それは飲み友達がnoteの存在を私に紹介してくれたから。そしてその男は続けて言った。 「君の失恋話の一つでも書いたらきっと多くの人がせせら笑ってくれるだろうよ」と、にやけ顔。 そんな言葉、まったく私が人格者だったからよかったものを、普通の人ならつまみのナッツをカブスの今永ばりに投げつけていたことだろう。しかしそんなこと私はおくびにも出さないのだ。 とはいえ飲みの席のことである。私も彼に対して同じような言動を起こしたかもしれない。なぜ