喜創会 シゴトストーリーvol.1 北村義行さん
〜シゴトストーリーとは〜
このインタビューは、喜創会で働く職員のキャリアや経験談を通じて、介護の仕事の魅力を発信することを目的としています。特に、経験を通じて得た価値観や気づきを若い世代や未経験者に伝え、業務や職業選択の参考になることを目指しています。インタビューでは、事前に「人生折れ線グラフ」で過去を振り返っていただき、転機を深掘りしました。
一人目の「シゴトストーリー」は、介護職歴が20年以上のベテラン北村義行さんです!
営業職から介護職へ:新しい道を歩み始めた理由
ーどのような経緯で介護の仕事に就いたのでしょうか?
大学から地元滋賀を離れ、そのまま県外で自動車関連の商社で営業をしていました。大手メーカーに塗装塗料を納める仕事で、発注された商品を売るだけでなく、工場の生産ラインにおける仕上がりまで総合的に関わる仕事でした。
お客様との接待などに抵抗はなかったのですが、当時の毎月数千万単位のノルマをこなす日々に、プレッシャーを感じるようになりました。特に、薦めたいと思わない商品を無理に売らなければならないことに違和感を感じ、次第に営業の仕事にネガティブな気持ちが強くなりました。その結果、体調を崩し、営業職を辞めることになりました。
その後、1年ほどリハビリ期間があり、引きこもりのような状態でしたが、「このままではいけない」と思い立ち、ヘルパー2級の資格を取得したことが介護職への道を歩んだきっかけでした。ご縁のあった法人で、デイサービスの臨時職員から始め、特別養護老人ホームや認知症デイサービスの主任など、さまざまな経験を積むことができました。
当時は深く考えず、営業や製造、販売など自分が向いていないと思う仕事を避けて探していました。その中で介護を選んだのは、子どもの頃に生徒会活動で福祉施設を訪問した経験があり、お年寄りと接することに抵抗がなかったので、福祉をそれほど遠い存在とは感じていなかったからだと思います。まずは資格の取得から始め、介護の世界に触れることにしました。それから、かれこれ約20年、今では人材育成の担当者として新人指導を任されるほどになりました。
ー介護の仕事で最初に苦労したことは?
よくあることですが、指導する職員によって教え方や指示が異なることがありました。ある職員に教えられた通りにすると、別の職員に怒られることがあり、その調整に苦労しましたね。その経験から、喜創会で新人を指導するにあたっては、職員によって基本の指導内容に差が出ないように心がけています。
また、デイサービスでは車の運転が必要でしたが、土地勘がない地域での運転に苦労しました。迎えに行く際にルートが少しずれると「遠回りだ」と言われることもあるので、前日の夜にはシミュレーションをして、慣れるための努力をしていました。
病気との向き合い
―喜創会への入職のきっかけは何だったんでしょうか?
シンプルに家族の事情です。転職するまで県外にいて、やっぱり両親の近くに住んだ方が安心だなと思って、42歳の時、滋賀へ帰ってきました。そこから介護の職を探して、喜創会に入職することになりました。ハローワークで仕事を探していた際に、『ナースログ(喜創会 特別養護老人ホーム)』が立ち上げ時期で、ちょうど求人が出ていたこともあり目に留まりました。当時の年齢では正職員の募集が少なく、非常勤や女性限定、年齢制限がある求人が多かった中で、喜創会は年齢制限がなかったため、応募を決めました。
―喜創会に転職されてからのエピソードを教えていただけますか?
病気を抱えながらの仕事に苦労しました。時々胸の痛みがやってくる症状で、当時病気と気づかなかった期間がありました。日常的に、身体・精神共にストレスを抱えていたんだと思います。同僚のミスがあったり、うまくいかない点があった時に、つい感情的になってしまうことがありました。症状の影響もあって、冷静に対応する余裕がなかったんだと思います。
介護職を始めて、自分なりに積み上げてきた介護のやり方や理想があったので、余計に周りとの意見の違いにイライラして、同僚とギクシャクしてしまう時がしばしばありました。
―病気とはどのように向き合われたのでしょうか?
ある日、夜に自宅で過ごしていた時、いつもより長く胸の痛みが出た時がありました。病院に行ったところ、即入院が決まりました。手術を受けたことで症状が改善し、体調が良くなったことで、精神的にも余裕が持てるようになりました。今でも時々通院しています。
手術後の変化
―手術後はどのように変化がありましたか?
手術を受けた後は、ずいぶん身体がラクになりました。以前よりも心に余裕ができて、仕事に対する考え方も変わり、柔軟に対応できるようになったと感じます。
たとえば、利用者さんに嫌われていると感じた時、無理に関わろうとするよりも、別のスタッフに任せる方がいいという判断ができるようになりました。以前は、なんとか自分が気に入られるように努力しなさいという考え方が強かったのですが、今ではその考え方も柔軟になりました。
ミスやトラブルが起こった時も、人を責めるのではなく、「そういう時もあるよね」と冷静に受け止められるようになりました。
病気になった直後には、体調を優先して勤務シフトを配慮してもらったり、意見が合わないときにははっきり意見交換をしてもらったりと、上司・同僚共に自分の良い面も悪い面もよく見守っていただいたなと思い感謝しています。
介護の魅力:利用者さんとの関係を大切にする
―どういった所にやりがいを感じますか?
常に利用者さんの笑顔を引き出すことを大事にしているのですが、言葉で表現できない思いを読み取れた瞬間が嬉しいですね。利用者さんの表情や仕草から、何を求めているのかを想像して、立てた仮説通りに自分の行動がうまくいった時にやりがいを感じます。利用者さんとの関わりが本当に面白いです。
利用者さんの興味を引くために、面白いデザインのTシャツを仕事着にしています。話題には事欠かず、会話も自然と広がるのでとても効果的です。ただ、同じTシャツだと見慣れてしまうため、定期的に新しいデザインのシャツを探して更新し続けるのは、ちょっと大変ですね(笑)。
それと、仕事の段取りがしっかりできて、スムーズに業務が進んだ時にもやりがいを感じます。次の勤務のシュミレーションを、前日の晩からよく考えています。介助をどの順番で回るか、どのスキマに雑務をするか、をイメージするんです。イメージ通りに準備や業務が回るとすごく達成感があります。
これからの目標:経験を次世代に伝えていくこと
―これからの目標はなんですか?
3年ほど前から、教育指導担当を担っていて、新入職員の研修プログラムを立てたり、学生の実習指導を行ったりしています。今後の目標は、指導者として自分の経験を次世代に伝えていくことです。介護現場で培った知識やスキルを後輩たちに教えて、彼らの成長をサポートできることが楽しみです。
それと、健康が一番大事なので、体に気をつけながら、プライベートも仕事も楽しんで、充実した毎日を過ごしていきたいと思っています。
―教育担当として大事にしていることはなんですか?
まず、ひとつ一つの業務の理由をきちんと伝えるということです。例えば、トイレットペーパーを定期的に補充するという業務ひとつにしても、認知症の方に対する配慮があります。あるはずの物がなかったりすると混乱され、利用者さんが自分でどうにかしようとして転倒するリスクを減らせる、などです。認知症の利用者さんは、状況を判別することが難しい方もいらっしゃいます。物を取ろうとして、バランスを崩して転倒してしまうこともあり得ます。なぜ、そうするのか?を伝えることで、柔軟な対応ができるようになったり、事故を減らすことができます。
次に、指導といっても、自分のやり方を伝えながら、その人に合ったやり方を試行錯誤してね、と伝えていることです。特に介助のシーンでは、それぞれ介助する人の体型も性別も違うので、自分と同じような身体の使い方やコミュニケーションの取り方でうまくいくとは限りません。最初は真似から始めても、少しずつ自分のスタイルを見つけてもらえれば良いと思っています。
ほかにも、私が関わった研修期間の後は、新入職員のOJT報告書を作成して、ほかの指導職員にも、指導目標や本人の課題点を共有するようにしています。こうすることで、本人と指導職員で共通認識を持つことができます。
若手職員へメッセージ
日々の業務を行うだけでも大変な中、頑張ってくれて、本当にありがとうございます。一生懸命取り組んでいる姿はしっかり伝わってきています。スキルが身についてくると、少しずつ余裕が出てきます。そうなると、「こうしたらもっと楽しくなるかも」とか「こんな工夫ができるな」って考えられるようになります。
最初は技術や知識よりも、相手への思いやりが大事だと思いますが、複数の利用者さんに対応するためには、やっぱり技術も必要になってきます。トライアンドエラーを繰り返しながら、自分のスタイルを見つけて、少しでも楽しみながら仕事ができるようになると、もっと充実感が得られると思います。
未経験者へのメッセージ
ぼくは介護の仕事を、相手を想って行動した分だけ、自分に返ってくる仕事だと思っています。いろんなイメージが世間にあると思いますけど、ぼくみたいに介護にハマっている人間もいます。
もちろん、やってみないとわからない部分があります。いろんな異業種から転職してくる方も多いので、もし少しでも興味があるなら、ボランティアからでも始めてみてほしいです。
介護の現場を体験することで、自分に合った部分が見つかるかもしれません。そこから本格的に介護の道を歩むことだってできます。ぜひ一度、現場に足を運んでいただきたいです!
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