樹木と酸素のはなし その2
その1では、二酸化炭素排出量の
推移のグラフが示すこと、
というのを書きました。
樹木と酸素のはなし その1|樹木も人も笑顔に、樹木医mimi ( 三戸 久美子 )
繰り返しになりますが、
あのグラフが示すのは、
1985年からずっと、
直線的な増加傾向にあること。
ですが、もうひとつ、
あの「のこぎりの刃」のグラフが示すのは、
植物が光合成しているかどうかで、
大気中の二酸化炭素濃度が変動している、
ということでした。
しかも、グラフに現れるくらいの幅で。
二酸化炭素を吸収して
光合成をする過程で、
植物は、酸素を大気中に放出しています。
これを、植物・樹木が
「酸素をつくって(生成して)
くれている(人間のために)」
と説明されることが多いですよね?
木が1本あることで、何人が養われる、
という試算もいくつか試みられています。
たとえば。
いろいろな計算法があるうちの
典型的と言われる試算例だと?
成熟した葉の十分に着いた1本の木は、
10人の人が一年間に呼吸に使う量の
酸素を出す、とのこと。
植物や生態系の多様性(ばらつき)を
思うと、この計算も、
誰かに求められて、
えいや!で出されたもの?
と想像されます。
最近の言い方だと「プライスレス」の
ものごとでも、
計算して(具体的・客観的な)
数値を出すように、
と求められる場面は多いから。
この数値もきっと
植物、樹木の大切さを理解するために
はじき出されたのですが…
数字をみても、
あまり実感がわかないときは
別の角度から、
眺めてみるのもよい気がします。
植物・樹木と酸素との関係は、
こういう解釈もできると思います。
光合成の材料として、
植物が主に必要とするものは、
二酸化炭素、水、太陽光(光エネルギー)
ですね。
光合成反応の後半で、
二酸化炭素から糖を合成するためには
「電子」と「水素」が必要。
で、光エネルギーを使って
水を分解して、
「水素」と「酸素」に分けている。
だから、酸素をつくっている、
というよりも、
水素が欲しくて
水を分解したら
副産物として、酸素が生じた
ともいえそう。
そして、光合成反応に
この酸素は使わないから、
とりあえず捨てている、
という方が実態に近いのかも?
とすれば、光合成というのは、
酸素を捨てる反応
ということもできる。
ただし、植物自身も
ずっと呼吸しているので
放出した酸素をまた使って
呼吸するのですけどね。
植物が生態系で
「生産者」として
他の多くの生物にエサを与えていること、
すみかや移動の中継点などの
多目的な「場」を提供していること
は、よく知られていると思います。
そのうえ、
光合成する過程で不要になった
いってみれば「廃棄物」「不要品」
の酸素まで、
他の生物の役に立つんです。
植物、樹木のすることは、
本当にムダがない。
すごいなあ、と思います。
ちょうどこれから紅葉シーズンなので、
行楽が楽しみな方も多いと思います。
ですが、一方で、落葉は、
掃除が大変だから、ということで
木を切りたくなる原因にもなっています。
掃除の大変さが
わからないわけではありませんが、
はあ、とため息は出ます。
美しさに感動させてくれた
紅葉した葉っぱは
落ちた瞬間に
嫌われもののゴミになる…
人間は、ついつい、
相手(植物・樹木)を
なんとかしようと
考えてしまいます。
が、光合成1つとってみても、
植物は、難癖のつけようのない
とても洗練された、
利他の生き方をしています。
落ち葉をゴミにしないで
役立てる、現代的な方法を
だれか発明してくれないものか。
それを夢見てしまいます。