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生物多様性の豊かさを実感、沢井ゆず

卒業生が暮らすお家にお邪魔して、
思いがけない「沢井ユズ」という種類の
みかんの古木に会わせてもらいました。

「沢井みかん」と聞いてすぐに、
ああ、あれね、とわかる方は
かなりの柑橘、みかん通だと思います。

この木の現在のオーナー、主な養育者は、
卒業生ではない別の方で、
大切にしているこのみかんのことを
いろいろと教えて下さりました。

樹木の樹齢は約80歳。
過去に何か大きな出来事があったらしく、
傾いていて、幹の生きている部分は
ごくわずか。

だけど、今年もたくさんの実を
ならせてくれたこと。

皮の香りがよいので、
乾かして陳皮として利用すること。

江戸時代には、献上品であったことなど。

そして、つくばの福来(ふくれ)みかん、
として知られるみかんと、
種類自体は同じであることも。

最初、大きな深いザルに
薄いオレンジ色の小さなみかんが
どっさり入っているのを
目にしたとき、
体調が悪い木がつけた実だから?
と思いました。

見たことのないタイプの
みかんなのです。

ですが、この地域で
限られた方が大切に守り育てている
希少種であることを知ってから見ると、
ああ、だから、あのような色や形だったのだ、
と納得しました。

花がどっさり咲いて
とてもきれいだったそうですが、
このミカンの木は、多産でも知られる品種。

ここの古木は、根元は太いのですが、
2本立ちだった幹の一方は、
すでに枯れてなくなり、
残された幹も、大きく傾いています。
うまい具合に支柱をしてもらっているけれど。

そして、生きている幹も
限られた部分だけで生活しているので、
見た目は、なかなか痛々しい感じです。

仕事で体調不良の樹木を
どっさり見ていない人にとっては、
大丈夫かしら?と心配される風貌。

しかもその実は、
ほどよい酸味で美味しくて
香りよく、ジューシー。

少し浮いてついている外皮は
とてもむきやすい。

そして、内側の白いすじは、
レースのような繊細な細かさ、
しかも、まとまって
きれいにはがれます。

少しの量の枝葉しかなくなっても、
花つき、実つきはよい。
多産の性質は、ちゃんと発揮されています。

そんな他のどの種類のミカンとも違う
優れた特性を持つ実を
どっさりと実らせてくれる品種。

優れてはいても、
限られた場所にしかなくて、
生産量が少ないので、
知る人ぞ知る存在。

今どきの効率優先の価値観では、
今の人の好みの品種を優良と決めて、
それを集中的に育てる。

そして、その品種が飽きられたら
また別の人気品種に置き換える。

そういうやり方をしていると、
沢井みかんのような品種は
あっという間に消えてしまいます。

ですが、手をかけなくても
静かに淡々と生きて
優れたミカンを実らせてくれる存在は、
人口が減り、地方、郊外で
農林業に従事する人の数も
かなり少なくなりそうな未来には、
希望の存在かもしれません。

それに、この木はとても不思議な存在で、
ゆずとは名付けられているけど、
純粋なユズではないので、
あの鋭く長いとげがありません。

だから、実の収穫が楽。
これも強みです。

みかんだけど、
香りがとてもよくて
皮が貴重品。
むいて食べることもできます。

「いいとこ取りはない」
と思っている私に
「自然界が与えてくれるものには
例外があって、そうでもないのよ、
私を見てごらん」
と言っているようです。

生物多様性は、豊かさでもあり、
可能性でもある。

その可能性を見せてくれる沢井ユズ。
希少ですが、
よろしければ、出会って楽しんで頂ければ。

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