![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158821789/rectangle_large_type_2_a12f8882d2ca6e6c5dfaa82029211930.png?width=1200)
10月20日 赤と青とエスキース
交わらない赤と青は、冷たさと熱さ。臆病や諦めと、胸に灯る強い想い。誰かの人生が動く時、いつもその場には赤と青が宿っていた。ジャックの「エスキース」の少女とともに。
物語の幕が下りる時、カーテンコールが始まる。
拍手の中、全てが静かな幸せに包まれていく。
↑せっかくだから紹介文を考えてみました
今日の本 「赤と青とエスキース」 青山美智子さん
※本の後半の感想です。重大なネタバレはしていませんが、お嫌な方は念の為。
一昨日、二章まで読んでその続き。
三章 トマトジュースとバタフライピー 漫画家タカシマの、かつてのアシスタント・砂川が、「ウルトラ・マンガ大賞」を受賞した。雑誌の対談企画のため、二人は久しぶりに顔を合わせるが……。
三章は人間くさい漫画家と、スマートな弟子の話。タカシマの表に出す顔も、信念もかっこいい大人だと思った。
(三章を読みながらここでやっと章タイトルが赤と青で対になっている事に気づく。)
四章 赤鬼と青鬼 パニック障害が発症し休暇をとることになった51歳の茜。そんなとき、元恋人の蒼から連絡がきて……。
茜は蒼の部屋で、10年前の漫画家達の対談記事を見つける。…三章の話と繋がった。
それまで四章は大人の恋愛話かあ…(長年そばにいた2人が、些細な喧嘩で別れてしまい、ぎこちなくも久しぶりに会う)…正直よく分からないなあ、と思って読んでいたけれど、ぐっと物語に引き込まれる。
そっか、「エスキース」を軸にした、10年ずつの物語だったんだ。
(10年ごとの経過が物語をより一層深くさせる。)
それでいて、入れ子構造になっていて美しい。
(一章 「エスキース」が描かれていく。
二章 「エスキース」の額縁が作られていく。
三章 「エスキース」のある喫茶店で対談。
そして四章につながる。)
些細なことで別れてしまったけれど、本当は相手を恋しく思っていた2人。(わだかまりや大人のプライドみたいなのもあるのかも)口はださないけれど。
思い合うゆえのすれ違いやぎこちなさは、どこか一章を連想させる。
(というか重なるようにしてあるのだ。相対的な構成にほれぼれ。)
豆まきをする2人。
(また福茶が飲みたくなるなあ…とおもったら、小説内に福茶(の話)がでてきて、笑ってしまった。
こんな偶然もあるんだ。)
ふと一章で感じた"冷たさ"のある熱って、"当たり前に側にある思い"なのかもと思った。
近すぎるから、熱さは感じないようで、本当は心の芯にずっとある思い。(ずっと変わらない、願いの様な、愛。)
寄り添う事こそ愛なのかもしれない。
そしてラスト…。そのままの勢いでプロローグも読み進める。
エピローグ 水彩画の大家であるジャック・ジャクソンの元に、20代の頃に描き、手放したある絵画が戻ってきて……。
四章のラストからプロローグ…もう言葉にならない。
"幕が閉じてあがるように、がらっと視点が変わってく感じ"
と一昨日の感想に書いたけれど、それならばプロローグはカーテンコールだ。舞台を見終わった後、もう一度、熱気に包まれる。
章の共通点は「エスキース」(とジャック)だけだと思ってたけど、まだあった。
一、四章は想いあう恋人たちで、二、三章とプロローグは、
"作品を作ることに情熱をかける思い"だ。
それも、自分じゃなくて、自分の作品が、(たとえ作った本人の名が残らなくても、100年後もずっと)
誰かに届くように、と願う人達。
(あと、脇を固める人達もそれぞれ信念や自分の眼差しがあってよかった)
なんて美しいんだろう。パズルのピースがはまるような構成。
読後もずっと、静かな幸せに満たされていく本だった。
せっかくだから紹介文を考えてみました。(一番上)
(交わらない赤と青と書いたのは、この物語にまざった赤青、つまり紫のイメージが浮かばなくて。
それぞれの考えを変えるわけじゃなくて、相手を認め合う。
色が混ざらず、濁らず、折り重なる様に。)
前半の感想はこちら。(日記なので、本の感想以外も書いてますが…)