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【うつ抜け】好きなもの集め

 【うつ抜け】第1話はこちらから

 睡眠時間12時間超の生活に、少しだけ、大好きな勉強もできるようになった。
 じゃあ勉強以外の大半の時間って、何をしていたの?というと、ひたすらスマホを眺めていた。
 Xを開けて眺めて閉じて、Instagramを開けて眺めて閉じて、ただその繰り返し。
 特にXは、「おすすめ」タイムラインがあるから、あまり興味のないことも流れてくるのだけど、逆にそれが社会の覗き見をしているような感覚で、それはそれで良かった。
 というか、興味のあることを探す気力も当時はなくて、それしかできなかったと言う方が正確かもしれない。

 5月。
 Xで、「#漫画が読めるハッシュタグ」がついた、ある漫画を見つけた。
 「自己肯定感が低い人間が好きを集めた話」という漫画で、「今日もSNS見てスマホいじってるだけで一日が終わる……」というセリフで始まる。
 私のことじゃんと思って、軽い気持ちで読んでみた。

 大泣きした。

 うつ病と診断された作者が、「好き」に出逢うことで回復に向かっていくお話なのだけど、「好き」を自分の中にある「小瓶」に集めていく描写が、私をうつから救ってくれる一筋の光に見えた。
 私にもきっといつかこんな日が来るんだと、そう予感させられて、救われうることに気付いて、ほっとした気持ちで大泣きした。

 夏の終わり。
 猛暑だったせいか、急に東南アジアの麺ものが食べたくなった。
 旅行はそう簡単に行けないから、東京にでも美味しいお店はないかとSNSで探し始めた。
 けどよくよく考えたら、パクチーは苦手だしなぁ。東京もちょっと遠いしなぁ。けど美味しいもの食べたいなぁ。
 そこで気付いた。
 近所の美味しいものを、探せば良いんじゃない?

 それからは、ただ漫然とSNSを眺めていた時間が、「近所の美味しいもの探し」の時間に変わった。
 これが、私の「好きなもの集め」の始まりだった。

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