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雨の日は雨を楽しむ
雨が続く。
太郎は雨の日は「あめ、ざーざー」、雪の日は「ゆき、こんこーん」と言って空を見上げる。嫌ではないらしい。
以前は雨の日=おこもりの思考だったが、プラレールの音が充満する狭い家の中で電車の連結をさせられたりレールを修理させられたりと一日中JR職員として働かされるより、多少濡れても外へ出るほうが精神衛生上良いと気づいてからは、雨の日も散歩に行く。
帰ってすぐ温まれるよう、お風呂を沸かしてから。
幼い太郎はまだ傘を持てないから、彼と歩くとき私も傘をささない。
防水パーカーを着て、フードを被ってタコ入道なふたりが何を話すでもなく、濡れながらトコトコ歩く。
太郎は時々、植物の先っちょについたしずくを「キレイなもの、あった」という顔で触りに行ったりしている。
そして出会った水たまりという水たまりを踏破する。
ばあばにもらった「ながなぐちゅ」を履いた太郎は無敵だ。
子どもらしく飛び跳ねてバッシャンバッシャンすることはまれ。
水深や土壌を確認するがごとく、真剣な表情で踏みしめる。
見ていると面白い。
先日は大雨が降った。
翌日の公園は水たまりバブル。
尻もちついでに腰を下ろし、せっせと草を抜き始める。
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木の洞には水が溜まり、ボウフラのようなものがわいている。
手頃な枝を握って水をかき出す。
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水たまりさえあれば、放っておいても一人で忙しくしている。
彼は手のかからない子どもかもしれないなと思う。
母は雨に打たれたり蚊に刺されたりしながら、ただ側で見ているだけで良いのだから。