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星野リゾートのマーケティングは面白いんだ【後編】

(この記事は約6分で読めます)

【解答】5,000円のスパークリングワインを売る方法

ホテルブレストンコートの冷蔵庫に入っている、5,000円強するスパークリングワイン(以下「ワイン」)。
これを買ってもらうために、星野リゾートはどんなマーケティングを行っているのか?
私が実際に泊まってみて、考えた解答を書いてみます。

①ワインを「飲みたい気分にさせる」

①ー1客室の内観

まず、冷蔵庫の位置に注目してください。

客室:スタンダードコテージ(ツイン)の内観

この、冷蔵庫の上にあるミニバーが非常に工夫されています。
すごいなと感じたのが、上からのライトと鏡、そして吊ってあるシャンパングラスです。
ペアのシャンパングラスがキラキラ光るように、めっちゃお洒落にディスプレイされていました。
(写真はグラスが3つありますが、宿泊客の人数と同数配置だと思われます)

昼間はそんなでもなくても、夜になって辺りが静かになるとムードがグッと高まります。
「せっかくの旅行だし、ワインで乾杯しようか?」みたいな雰囲気になります。

普通のワインじゃなくてスパークリングワインなのもポイントです。
シャンパングラス+炭酸の泡+ライティングの3つが重なって、特別感が感じられました。

シャンパングラス(キラキラ)のイメージ

おまけに、ミニバーにある鏡です。
この位置取りも絶妙で…

客室の見取り図

この位置からだと、部屋の中に死角ができないんです。
一緒に宿泊した人がソファに座ってテレビを見ていても、ベッドに座っていても、ミニバーから会話ができます。

すると自然に「ねぇ、このグラス綺麗じゃない?」みたいな飲みのきっかけが発生しやすいです。

「雰囲気づくり」を侮ってはいけない

「な~んだ、お洒落な演出なんてどこのお店でもやってるじゃん」
と思われる方もいそうです。
でも、よく考えてみてください。

もし自分が「このワインを5,000円で売ってください」と言われたら、ワインの宣伝をしたくなりませんか?
「ぶどうは○○産で、△△賞を受賞して~、二人の記念日にオススメです!」みたいな商品説明を作りたくなりませんか?

でも、それってホテルのブランドイメージぶち壊しですよね。
その売り方では、5,000円の価格設定は高すぎます。

お客さんが旅行で味わいたいのは非日常感です。
非日常という雰囲気。そういう価値を提供するからこそ、
「ちょっと高いけど、今、このホテルでワインが飲みたい!」
と宿泊客に思わせることができるのだと思います。

あくまでスマートに、旅行の雰囲気を大切にした、気遣いを感じさせるマーケティング。
ここに星野リゾートのブランディングセンスを感じます。

①ー2ホテルの立地

次に、ブレストンコートの立地に注目します。

星野エリアの地図

軽井沢高原教会がすぐ近くにあります。
電車の中づり広告で目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

おそらく、ブレストンコートには多くのカップルが泊まりに来ます。
教会の下見を兼ねた宿泊も多いはず。
そういう状況に合わせた「5,000円」という価格設定なのだと感じます。

このワインがもし1,500円だったら、5,000円のワインの3倍売れるか
おそらく、売れません。
5,000円だから売れるんです。
二人で旅行に来た記念日。1,500円のワインでは、「非日常の雰囲気という価値」を提供できないからです。
ホテル単独ではなくて、エリア全体で商品のバランス設計をしているように感じます。


・他にも、近くにハルニレテラスがあります。

アンブレラスカイの様子

女子会等で宿泊するお客さんも多そうです。
人数が多めなら、1人あたりの支払いは少なくなります。
4人で飲めば1,500円はしないし、せっかくの旅行だからいいワインを飲もうか?みたいな流れになるかもしれません。

②ワイン以外の選択肢を消す

これはおまけ的な要素ですが、前回の記事に書いたように、ホテルの周囲には売店や自販機がありません。
夜は暗く、お酒を買いに車で出かけるのもかなり面倒に感じます。

アルコールを飲むとしたら、冷蔵庫の中にあるビールかワイン。
この二択で(教会を見に来るような)カップルが選択するとしたら
高めのワインを選ぶ確率は、通常のホテルと比べてかなり高くなるのではないでしょうか。

まとめ:「状況」をターゲットにしたマーケティングは面白い

〇「属性の「次」、状況ターゲティングでアフターデジタルが実現」
『日経クロストレンド』 202274 最終アクセスhttps://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00541/00005/

私が今回面白いなと感じたのは、デジタルマーケティングでよく使われる「状況ターゲティング」という手法です。
(具体例はリンク記事を参照)

星野リゾートの面白いところは、この「状況」を分析するだけでなくて、自分で作り出してしまうところです。

状況ターゲティングの事例は大学で勉強していくつか知っていたのですが、実際にターゲットになってみると説得力がすごいです。

マーケティングって本当に面白いなぁ(*^_^*)と、体感することができた軽井沢旅行でした。

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