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小学校6年生理科のプログラミングの授業で、子どもたちは創造的な活動にどれだけこだわることができるだろうか。
小学校6年生理科「電気の利用」単元では、コンデンサにためた電気を有効利用するために、センサーを使って必要なときだけ電気を使う、ということを実際に作りながら学ぶ授業がある。学習指導要領にも例示されている、いわゆるA分類というやつだ。
この授業は、やり方によってはいろいろなものが作れるとてもおもしろい授業なんだけど、ほとんどの学校では必要最低限のセンサと手回し発電機キットくらいしか用意されていない。そのような環境だと、できることには限りができてしまう。でも、先日訪問して授業をしたクラスでは、限られた環境のなかでもおもしろい活動にチャレンジしてくれた子たちが多く、久しぶりにやっていておもしかったので、忘れないように書き留めておこう。
椅子の角度に没頭し続けた子
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彼のグループは、椅子に座ったときに音がなる、ブーブークッションのようなものを作ろうとしていた。彼は MESH を椅子に取り付ける場所にこだわっていた。
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椅子の背もたれに貼ってはバレてしまう。それでは警戒されて座ってくれないかもしれない。絶妙な位置に取り付ける必要がある。さらに、プログラムがちゃんと動作するための工夫をしなければならない。彼は45分のうち半分以上を椅子と格闘することに費やしていた。
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最終的に、背もたれが人に合わせて動く部分二着目し、光センサーを覆う部品をガムテープでつくって実装していた。僕はこういう工夫が大好きだ。
学校教育では、このような授業で彼が何を学んだかが問われる。椅子と格闘していた彼は、多くの教育者からしたら無駄なことに執着していたように見えるかもしれない。でも、僕から見たらこういう工夫こそが大切なのである。彼は自分にとって意味のあることに熱中し、没頭していた。これがつくることの歓びであり、Hard fun! である。問題解決でもあり、探究的な学びそのものである。「最短経路での知識の獲得」を目指す Instructionism では到達できない境地なのだ。
びっくり箱を作ることに熱中していたグループ
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この授業のプログラミング的なポイントは、「センサーの値に応じてなにかをする」という、条件とやることを組み合わせていく活動である。
この子たちは、MESHの明るさセンサーを使って、箱が開けられたときに音を鳴らす、というプログラムを作った。これ自体はよくあることだ。
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この子たちは、センサーによって音がなってLEDが光るということだけでは満足せず、ちゃんとびっくり箱を作ろうとした。わざわざ教室におりがみセットを取りに戻って、飛び出てくるためのものを作っていった。
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授業ギリギリになってやっと完成。できたもので遊ぶ時間は少なかったけど、つくるプロセスに没頭していたので、とても満足げな顔をしていた。
「つくることに没頭する」ことを邪魔しない。
授業には時間的な制約が強く働くので、子どもたちがつくることに没頭するための時間は大抵取れない。特にコンピュータを使った創造的な活動に取り組める余裕は正直ない。
でも、プログラミングの授業は、コンピュータを使った創造的な活動ができる貴重な機会だ。この機会を無駄にしてはいけない。
共有の学びとしての理科的な学びは1時間弱でサクッと押さえ、もう1時間を創作の時間に充てる。そのための素材はなくてもいい。ここで紹介した2グループは、折り紙や椅子、ガムテープといったどこにでもあるような素材を自由に使いながらつくることに没頭していた。大切なのは、素材を味わう時間なのだと思う。
プログラミングについては、MESHの使い方を簡単に教えただけで、僕が説明していたのは45分のうちの15-20分程度だと思う。それ以外はほぼずっと活動していた。子どもたちは使い方がわからなくてもある程度のところまでは自分たちでたどり着く。これを個人の活動にしてしまうとしんどいので、協同的にグループで取り組むのも肝だと思う。
多くの学校で、ちょうど今頃6年生理科の単元が行われている時期だ。ぜひ今年のプログラミングの授業では、自由につくる余白の時間を取り入れてみてはどうだろうか。
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