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基岡夕理(きおかゆうり)
2022年9月8日 18:43
一軒家の一室で、学生服姿をした三人の青年がテーブルを囲ってあぐらをかいていた。まだ陽の高い時刻で、クーラーが絶賛稼働中である。その一人である祷吏は、二人に向かって真剣に話し出した。「多様性の促進は争いの火種をばら撒く側面を持っていることに気づいた」二人は揃って難しい顔になるが、祷吏は構わず続けた。「考え方が増えればそれだけ対立する意見が増えるんだから、気づいてみれば当たり前のことなんだ
2022年9月5日 20:44
私にとって、家は居場所と言えなかった。具体的な時期は分からないけど、少なくとも小四ぐらいには両親に歯向かうことを諦めていた。母さんの好きな言葉は『自分らしく』だった。だから私が文句を言うと「人の生き方を否定するなんて最低」とよく言い返された。父さんも『みんなそれぞれ』と言って母さんを擁護するし、世の中は『自分らしく自由に生きることが正しい』という風潮だったから否定できなかった。人が傷つく