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疲れた時は肉を食らえ
火を見ました。
キッチンコンロから出る青い炎じゃなくって、炭から吹き出る赤い炎です。
というか、正確に言えば「焼ける肉」を見ていました。
ちょっとだけ雨が降ってきて、嫌だなぁと思ったのですが、酸性雨で程よく柔らかくなった肉が口の中でホロホロに溶けていきました。
というか、正確に言えばそんなことは気にせずガジガジと数回噛んで飲み込みました。
こういう火ってサイコーじゃないですか。
なんだか硬くなった気持ちがふんわりとほどけていくようです。
というか、正確に言えば空腹感が満たされていったんだと思います。
炭のにおいと、緩やかな炎、したたる脂です。
米という純白のクッションにふんわりと乗せて、リズムに乗ったお肉が口の中に飛び込んできます。
というか、正確に言えばワンバン飯で肉が旨すぎてどんどん食べちゃうってだけです。とまらねー。
僕は前の晩に遅くまで起きていて、どことなく体のだるさに襲われていました。
何かしたいわけでもなく、不思議と眠いわけでもありません。
どこかに散歩へ行って気晴らしをしたいというわけでもありません。
だけどなんだか、胸のあたりが締め付けられるような重苦しいモヤつきに襲われていて、それでいて大きな穴が空いたような気持ちがして、スッキリしないのでした。
友人が、
「何かあったら、どこそこの焼肉屋に行くと良いですよ」
と言っているのを思い出して。
ああ、なるほどな。
僕は「確かに、こういう時は肉が食べたい」と思いました。
その重く締め付けられ、ごっそりと臓器がまるまる抜けてしまったようなその胸の穴に、ぴったりと気持ちが当てはまったようでした。
そそくさと肉を買いに行って、火を起こし、米を炊きます。スピードが勝負。そして、炊飯器の炊き上がりの音と共に肉を網の上に置きはじめます。
タレにくぐらせた肉をまずひと口食べて、ビールで流します。
ぶはー。
助かった。
純粋にそう思いました。
バラバラになったパズルのピースが当てはまっていくかのような、スッキリとする瞬間です。
こぼれ落ちた臓器を1個ずつ拾って体の中に入れていくかのようなそういうパズル。
ワンバンさせた米がうまくないわけはないし、お肉もうまい。
疲れがどっと出て、眠気に襲われました。
肉を食って安心したのか満足したのか、とにかくそのまま寝ました。
友人の助言というのは僕は好きです。
ひとに言われて自分を正すのは、もしかすると自分にはストレスになることがあるかもしれませんが、それでもなぜか心地いいことが多い。
疲れた時は肉を食え。
感謝と共に。
肉を食って明日のことを考えよう、これからの僕は。
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