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随筆・日記
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【朔 #236】「引きずって」が「曳きずって」じゃなくて良かった

【朔 #236】「引きずって」が「曳きずって」じゃなくて良かった

 束の間の自由読書で、小笠原鳥類『素晴らしい海岸生物の観察』(思潮社、二〇〇四年)の詩篇「私達、人を引きずって歩いている」が気に入って、というか感動して、颪が強まってきたホームのベンチで何度も読んでいた。「おもしろい!」となるかと思いきや、感動している自分が不思議だった。なんだか、かなしいような詩で、でも、「引きずって」が「曳きずって」じゃなくて良かった。かなしい、とはすぐ腐る形容詞で、一等、佳い

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【朔 #235】二十一日間だけ同い年

【朔 #235】二十一日間だけ同い年

 愛子内親王殿下(と言っておかないとなんだか落ち着かないから言うだけなので、そう身構えないでください、と予防線を張らないといけないのが面倒くさいが)のお誕生日らしく、二十三歳になられたらしい。えっ、そんなに年近かったっけ、となるし、二十一日間だけ同い年ってことか、ともなる。私が中学生の頃だったか、見るからに窶れた姿をカメラに晒されている時期があって、心配していたものだった。今では考えられない。
 

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【朔 #234】北村太郎ノオト

【朔 #234】北村太郎ノオト

 脱稿を脱稿のままにせず、永遠の起稿にもってゆく。
 わが二十二歳の、多、輪、夢、零、として『北村太郎ノオト』を始める。思えば、これまで一年ごとに深掘りする詩人が現れた。吉原幸子、吉増剛造、榎本櫻湖、と来て、これからの一年は北村太郎だ。「死の死」、そのために北村太郎の「死」について見ていくことになる。
 咳止めの効果や如何。

【朔  #233】海鼠の疣と大山椒魚の疣の政治性

【朔 #233】海鼠の疣と大山椒魚の疣の政治性

 門、門、門、閂、門、門、門。
 思惟、の滴りに似た真鯉か真鶴。着脱式冠婚葬祭は延期して、フライドポテトで満腹になるべう、べく、べかり、けり蹴りあげて連用形終止、鐘を換金してきた尼僧は悍ましい空を仰ぐ、蟻に蛍。しかも、喉元に当てられた鋒が血を細く垂れ流す、わかるか、喉じゃねえよ。おい、軽くなってんぞ。河岸段丘を止揚して冬でも大霞の中、陸上競技に勤しむ磯鴫か加熱する擦傷? 俺も一個のAIと絡み合った

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【朔 #232】現実では本名を知らない

【朔 #232】現実では本名を知らない

 今朝の夢。
 師と他数人とで吟行。海が近くにあるなあ、と直感する寂れた商店街。ペットショップがあって、その内観だけが現代的かつ清潔で明るい。入店してみると(私はペットショップが大嫌いだ)、そこは畳で言えば二十枚(わかりにくいか)ほどの広さで、商品を並べるような棚はなく隅にキャットタワーが置かれているだけで、二面の壁を埋める三段のガラスケースには何も入っていない(入れられていない)。がらんとした店

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【朔 #231】舌が捻れる音

【朔 #231】舌が捻れる音

 耳元で、舌が捻れる音。
 またしても円形闘技場。
 寒い区役所から逃げた。
 不安の形象を振り払え。(ない。)

【朔 #230】余計

【朔 #230】余計

 北村太郎を読むときは、身の回りに雪が降っていると錯覚するほど静かな夜が相応しい。
 朝顔の種の、
 固い黒の、奥、
 瑞々しい葉が生まれたての犬のようになっている、
 のを、
 見てみたくて、どうしても見てみたくて、
 カッターの刃をひとつ折り、
 押し当てたのだ(どこに?どこに?どこに???????)。
 足の裏で鉄錆が育つのをセイレーンは知っていた。丸みを帯びたウイスキーボトルを抱えて私は眠

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【朔 #229】海鼠

【朔 #229】海鼠

 海鼠の尻とも口ともわからぬとにかく端を切ってみて人とも魚とも齧歯類ともわからぬ歯が出てくる魚にも歯がある意味には明日がないみたいだ水の層に眼を乗せて鯉が迫ってきた夜明け前サスティナブル権現が傾いて前傾全景全系回路と歌舞伎と海鼠の腸を取るためには先ず腹に見立てた箇所を切り開けば良くその時になにかが漏れてくるかもしれないが捨てることそれは未消化のデトリタス死体の死体と言ったところか砂とともに掻き集め

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【朔 #228】二十年後って

【朔 #228】二十年後って

 これは私の単なる無粋な妄想なのだが、彼岸で谷川俊太郎がはにかみながら吉原幸子と再会して、そこに北村太郎も加わって、死というものの実際を語り合っている気がするのである。語っているうちに、みんな笑って、車椅子は要らない、渇いた眼は潤い、猫がたくさん寄ってくる。繰り返す、これは私の妄想である。
 だけど、木菟。予言者めくなあ。
 全ては脳内の、一音だけの音楽だった。
 先日、表彰式後の懇親会で奇跡的に

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【朔 #227】梢が喜んでいる

【朔 #227】梢が喜んでいる

 球体関節、
 着脱式冠婚葬祭。
 柚子(モドキ?)の、口がクタクタになっていて、スマホの画面がうまく反応してくれないわ。白熊と金屏風はあからさまなデペイズマンだけれども、十一月の海で逢う、捨案山子、嗅がしですよ、夜々(はらわたの煮えくりかへる栄螺かな/小川軽舟)。明日葉、明日菜、寛永通宝!
 着脱式冠婚葬祭。

 憂国忌より先に誕生日が来て、
 私は二十二年の楠らしい。
 梢が喜んでいる。

【朔 #226】太陽の片言は真っ先に私に献上されてしかるべき

【朔 #226】太陽の片言は真っ先に私に献上されてしかるべき

 表彰式(詩ではない)に出席するため、初めてJRで奈良に行く。近鉄よりも畑や谷を通過する時間が長く、ほのぼのとした車中。
 思えば、自分の何かしらの作品が正賞を受賞したことってあまりなかった気がする。スポーツもやっていないので、勝敗とか順位とかに左右されずにやってこれたが、批評の目に晒されてこなかったのだとも言える。
 とんでもない人達から「あれは良かった、凄かった」と言われると夢かと思う。そこに

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【朔 #225】手を洗って

【朔 #225】手を洗って

 かつて、「手洗い」という詩を書いた。個人詩誌『卵』の何号だったか、まあ、三年前の作品で、詩を書いた後には手を洗う、という習慣を書いたのだ。
 私は生活の中で頻繁に手を洗う。それは別に感染症予防でもなんでもなく、単に潔癖症なのだ。例えば、本を読んでいて目が痒くなったら、手を洗ってから目を擦る。食パンを袋から取り出すときには手を洗って、よく拭いて(これも清潔な紙であることが望ましい)、パンを取り出し

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【朔 #224】著作権

【朔 #224】著作権

 十一月も咲く朝顔。立冬まで咲くかしら。
 見るからに華美であるとかではないが、
 朝顔のこの美しいって言っちゃいけない、……なんだろうこれは。可憐でもない、空間性。時間性。
 Daisy……Daisy……
 鯨は、寝ただろう。熱湯と冷水、混ぜていくみたいな、窓、桟が擦り減る。ぼろ、ぼろぼろの巻貝。著作権が。

【朔 #223】洗濯機はあっても選択機はない

【朔 #223】洗濯機はあっても選択機はない

 廊下に移動祝祭日が転がっていて、容易く踏みつけるとfの音が鳴る。欠伸も満足にできないし、な行の反応が悪いので、美術館には建築家が殺到するまで水牛とともに遊ぶ星の構成が、水を捲り、花を捲り、茫洋たる、とは使い古された天井を這う紫煙のような凡庸!
 ときに、
 馬鹿馬鹿しい選択。
 洗濯機はあっても選択機はない。
 それは波のようで雨であった……。深夜入れ替わり立ち替わりカップルが接吻するバス停のベ

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