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イネイブリングとは気がつかず【読書】

『家族』を超えて生きる 
西成の精神障害者コミュニティ支援の現場から
山本智子 著  創元社
を読了。

そこでイネイブリングについて書かれていました。

イネイブリングとは、『当事者自身が引き起こした問題に、本人が向き合わなくてもいいように、また回復していくためにさまざまな困難を克服していくことをしないですむように、その配偶者や支援者など周囲の人々がしてしまう行動(渡邊、二○一七:一四四一)であったり、『よかれと思ってやっているのに、結果的に相手の抱える問題を進行させてしまう行為』(小瀬古、ニ○一九:三一)だといわれているものである。

山本智子.『家族』を超えて生きる 西成の精神障害者コミュニティ支援の現場から.創元社.2022

実践の中で、このような場面に何度も出くわすことがある。
著者の山本智子さんも

以前に、ある計画相談の職員が生活保護者の支援を担当していたときのエピソードがある。
新しく入った相談支援員から『パチンコで生活保護費を全部すってしまって、家賃が払えなくて、大家から『出ていけ』って言われているんで、代わりに立て替えました』という報告を聞いたとき、その職員は『え、なんで?相談支援員がすることと違うよ。したらあかんことやん』と言っていた。その援助の対象になっている人は、これまでも何度も、有り金をすべてパチンコに使って家賃を払えなくなったことがあるそうだ。そのたびに『いくらパチンコに全財産を使ったとしてもアパートを追い出されたら困るだろう』と誰かが立て替えていたらしい。

山本智子.『家族』を超えて生きる 西成の精神障害者コミュニティ支援の現場から.創元社.2022

私自身も何度もこのような場面に出くわすことがあった。

事例のように対応すれば、一時的には解決になるかもしれないが、
根本的な解決に全くならない。

なにより本人が”困らない”ことが大きな問題。
支援者の関わりが、クライアントが考える機会「気づき」を奪ってしまっていることが問題であると感じる。

これは私の考えであるが、
人は困らないと何か行動に移すというのは難しいと考えている。
自分に置き換えてみてもそうだが、”困らない”とそもそも相談しないし、
必要な手続きもしないし、区役所などの窓口に出向くこともしない。
「風邪をひいて」しんどいから病院へ行く。
行動には必ず理由がある。

クライアントには、
起こっている事実をきちんと説明したうえで、
今後の対応策をともに考えることがとても大切である。
だって、”伝えない”・”支援者で解決してしまう”は、考え方によっては、
「あなたは理解できないでしょ?」「解決できないでしょ?」と言っているようなもの。
認知症であっても、精神疾患があってもどのように言語化すれば、クライアントに伝わるか。課題認識してくれるか。今後を一緒に考えられるかを問い続けることがソーシャルワーカーには必要だと感じる。

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