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訓戒

近頃の『推し万歳』『推し活エライ』『推しに夢中の私サイコー!』『推しを否定する発言は許さん』のような極端な風潮がちょっと苦手だ。


え?いやいや、おいおい!
普段から「ミッシェルガンエレファントだ、ウエノコウジだ、武藤昭平だ、ミッシェルだ、ウエノだ、武藤だ、武藤だ!」(※1)みたいな事を叫んでいるヤツが何の寝言を…というつっこみが全方位から聞こえてくる気がしますが。

アーアー キコエナイ キコエナイ

「おまいう」(※2)と言われても仕方がないのですが、最近の「推しと推しを好きな私全肯定」みたいな世間の雰囲気が本当に合わないんですよ。

※1 ミッシェルガンエレファント=私がドはまりしているバンド、2003年解散
※1 ウエノコウジさん=ミッシェルガンエレファントのベーシスト
※1 武藤昭平さん=「勝手にしやがれ」というバンドのボーカル・ドラム。ウエノさんの相棒
※2 おまいう=「(今までの言動を棚に上げて)お前が言うな」を略した言葉。ネットスラング


何を好きになるかはその人の自由だし、あなたと私は趣味も解釈も信じる宗教も違うから、考え方が違ってくるのは当然なのだけれど、「何かに夢中に『なりすぎる』」というのが、私はどうにも合わない。
私の場合、何かに・誰かに夢中になればなるほど、俯瞰的視点を持つ「もう一人の私」が頭をもたげてきてしまうタイプなので、何かにアツくなるほど、冷めた私も同時に脳内に同居している感じになるんですよ。
セルフ「冷静と情熱のあいだ」。

いや、冷静と情熱のあいだって言ってみたかっただけです。はい。

ちなみにあの本、辻仁成じゃなくて江國香織が書いた方の「冷静と情熱のあいだ」。
初めて読んだのは、確か高校生の時。イタリアで恋をするというシチュエーションがロマンティック過ぎて「ふーん」くらいの感想しか持てなかったのですが、大人になって読み返すとね、いいんですよ!
読み始めると、自分の今いる場所がイタリアの時間の流れに変わる感じがイイ!私はイタリアへ行ったことが無いけれど、江國香織の文章を読んでいるうちに、自分もそこで暮らしているような感覚を持たせてくれる。江國香織の情景描写すごいな~って感心する。

ただねぇ、どうしてもつっこみたい点もあってね、ヒロインの「あおい」に言いたいのは、優しくて完璧な恋人がいて満ち足りているのに、昔の男が忘れられなくて会いに行こうとするのはどうなの?ってこと。

あなたは、鼻をかんで捨てたテッシュを、「あ、まだ使えるわ」って拾うような事をするんですか?って話ですよ。
捨てたテッシュをもう一度拾うような「ショッパイこと」すんな!って言いたい。本気でお説教したい。

しかも、大事にしてくれる恋人に対して、気のあるそぶりをし続けているのに、たまに「あなたの事はそこまで好きじゃない…」って暗に匂わせてみたり。本当に小憎らしいヒロインぶり。
さすがにマーヴ(あおいの今の恋人、優しくて完璧な男)に失礼すぎるでしょ。あおいは大人のお付き合いのマナーがなってない。

もし「あおい」が女友達同士でお茶を飲んだら、「会うのはやめな」「元彼は思い出のまましまっておきなよ」って、友人から散々釘を刺されるのに、頑固で聞く耳持たず、ぬるっと元彼と会っちゃうタイプだろうな。
女性視点から言わせてもらうと「あおい」みたいな女性が一番面倒。
だってこれ以上ない暮らしをしているのに、心はかつての男の所へ飛ばしているんだもの。この暮らしの中で勝手に孤独を感じてみたりもしてさ、自分に少し酔ってるよね。
けれども、男性から見たら、そんな女性こそ魅力的に写るのかもしれないなぁ。皮肉なことだけれど。「あおい」を愛しているマーヴにはさすがに同情を禁じ得ない。

……あぁ、「あおい」について語りすぎた。申し訳ない。

今何の話してたっけ?
え~、私のどこかが冷めているって話でしたね。

そうそう。別に他人が何かに夢中になる事を否定したりはしないですよ。
他人を不愉快な気持ちにさせたり、社会のルールを破って迷惑をかけなきゃ別にいいんじゃない?位のざっくりとした感じに思ってる。
ただ、誰か・何かに夢中になっている私は、他人から見ればバカバカしく、大変くだらない状態になっているって事。そういう時、人は往々にして自分に酔い、他人からの指摘を無視し、無礼で無神経な言動をしてしまいがちだという意識は忘れずに生きていたい。

それでなくても、私は日々年を取り、いずれは年齢を重ねた者特有の「オリハルコン」並みのメンタルを持つようになり、それゆえに、世間の感覚と乖離していくことが目に見えているのだから。

ここまで読んで下さったあなた、お付き合いありがとう。
今日の文章は、将来、老骨となりながら好きな何かを追いかけているであろう、未来の私に向けた戒めだけれども、もしあなたが「あーなんか分かる」と少しでも思って下さったとしたら、あなたと私は良い友達になれるかもしれない。
ここは一つ、末永くよろしくお願いします。あなたとあなたの推しに祝福を。

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