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【映画批評】#55「ベルサイユのばら」 入門編としてはよくできている

革命期のフランスに生きる人々の愛と人生を鮮やかに描き、テレビアニメ版や宝塚歌劇団による舞台版も大ヒットした池田理代子の名作漫画を新たに劇場アニメ化した「ベルサイユのばら」を徹底批評!
マンガ読まない、「ルックバック」にケチをつけるほどのアニメ疎すぎ人間である門外漢でもわかるほどの崇高かつ、もはや古典と呼ぶべき強度のある物語に圧倒!しかし、一見さんでもわかる窮屈さにある種の悶絶も…。


鑑賞メモ

タイトル
 ベルサイユのばら(113分)

鑑賞日
 2月4日(火)20:40
映画館
 あべのアポロシネマ(天王寺)
鑑賞料金
 1,300円(平日会員価格)
事前準備
 特になし、原作未読
体調
 すこぶる良し


点数(100点満点)& X短評

65点


あらすじ

将軍家の跡取りで、“息子”として育てられた男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ
隣国オーストリアから嫁いできた気高く優美な王妃マリー・アントワネット
オスカルの従者で幼なじみの平民アンドレ・グランディエ
容姿端麗で知性的なスウェーデンの伯爵ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン
彼らは栄華を誇る18世紀後半のフランス・ベルサイユで出会い、時代に翻弄されながらも、それぞれの運命を美しく生きる。

これは、フランス革命という激動の時代の中で、それぞれの人生を懸命に生き抜いた「愛と運命の物語」

「ベルサイユのばら」公式HPより引用

ネタバレあり感想&考察

明らかに一見さん向け映画
案外門戸が広い入門編に感じた

ベルばら世界をさらうという意味では楽しめたのではないかと。
筆者は「はいからさんが通る」がなぜか好きレベルでベルばらは今回が初だった。ちなみに一番好きな少女漫画は「あずきちゃん」である。あれは本当に名作。マンガもアニメも素晴らしい。あと紡木たく作品はちょいちょい読んでる程度。少女漫画原作の映画でいうと「ホットギミック」が一番好き。結構ばらばらです。世代的には「ご近所物語」と「マーマレードボーイ」だけど、読んだ覚えはある程度で正直内容は覚えていないし、思い入れもない。

ベルばらは興味がなかったわけではなく、単に筆者が男であり、少女漫画であり、社会人になってからはほとんど漫画を読む習慣がなくなったこともあり、普通の人よりさらに本作に触れる機会がなかったためである。だから不勉強であることは認めるし、そこはご容赦いただきたい。

そういった環境下での鑑賞であり、今週は特に観たい映画もなかったので、「ベルばら」でも観てみっかぐらいの軽い気持ちで行った。観た感じ、そういうモチベーションの観客に向けて作られている気がする。なので、自分には良い鑑賞体験だった。

あくまで正史をベースにした戯曲であることは間違いないだろう。ただ、大雑把にフランスのある時代を歴史的になぞる意味で、十分わかりやすい作り。世界史受験の筆者にとっては楽しみやすい作りにしてくれてありがたかった。原作は本作で拾い切れなかった人間模様がかなり盛り込まれているようで、すごく読んでみたい気持ちが高まっている。原作の良さも教養としてもインテリアとしても、間違いなく持っていて損しないことがわかった。機会をみて購入したいと思う。

少女漫画だけに色恋が絡むのは当然とはいえ、それ以外の崇高な精神を紐解く話だと何となくわかっていても実際目にするとやっぱりグッとくる話だった。相当原作の強度が強いことが分かる。これでもかとブチこまれるミュージカルシーン自体もゴージャスさが勝って、そんなにヤダみも感じなかった。

最終的にオスカル、アンドレにフォーカスが当たる作りであるならば、マリー・アントワネットとフェルゼン、ジェローデルが薄くなるのはしょうがないか。彼らももっと事情のあるキャラなんだろうな、などは容易に想像がつく。かなり色々なエピソードが2時間にギュウギュウに詰め込まれていたのだろうと思う。おそらくムリのある企画だったと思うが、まとまりは感じられた。実際興味もそそられたわけで。

「ベルサイユのばら」という不朽の名作の全体感を2時間で得られ、映画館で観るに相応しい映像と音楽のゴージャスさがしっかりある。
その点だけで特に文句をつける気はない。良い作品だ。

かいつまんでる感がひしひしと…
ファンの満足度は低いのではないかと推測

とはいえ、やっぱり2時間でやるにはキツかったのか、1個1個のエピソードのブツ切り感は否めなかった。

序盤から前の展開が終わって、次にはマリー・アントワネットが乗る馬が暴走して、その責任をアンドレに取らそうとして、みたいな話が急に挿しこまれるので、「何!?何!?」となってしまい、「これはダイジェスト版に近い作りなのかもな」と早い段階で事情を察せられたからよかったものの、「何だこりゃ?」となる一見さんも中にはいそう。

これがかなり唐突だった

一つ一つ、単独タテ割りのエピソードが並べられてる印象で、流れがぶった切られるのをミュージカルという力技で何とかつないでいた。わりかし薄氷のステップだったと思う。これは一見さんの自分でも感じてしまっていたので、原作ファンの満足度は厳しい部分がありそうだなと感じた。
やっぱり前後編で計4時間ぐらいは割くべき作品だったのでは?と感じてしまう。それに値する作品であることも伝わっただけにやや勿体なさも感じた。

もったいなさも強く感じる(白目)

ただ、それも厳しかったのだろうというのは本作内の描写で理解できてしまう部分がある。

フランス革命の始まりとされるバスティーユ襲撃の戦闘シーンを結構ガッツリみせてくれたのは良かったのだが、兵士の描写があまりにも安っぽすぎてここは本当にガッカリだった。「あぁ…ここで予算が尽きたっぽいな」というのを感じてしまった。オスカル率いる市民側の矢を、ただの的のような表現にされた官軍側がバタバタ倒れていくのはさすがに厳しい。あそこは原作ファンとか関係なく、文句をつける人が多いと思われる。

あそこだけは明らかに手抜きか、予算が尽きたか、納期に迫られたか、しか考えられない。かなり残念。

あと2時間にギュウギュウに詰めた影響か、しっかりとしたセリフが始まっているのに歌詞ありのBGMがガッツリ被っているところがあり、集中を削がれた。本作はミュージカルも一つの魅力なのでそれ自体は否定しないが、メリハリはつけないとそれこそ駆け足で進んでいる分、話の腰を折られた感じがして難しい。

「ベルサイユのばら」という名作を2時間内でまとめられてはいるものの、その難しさも同時に感じさせる部分もしっかり見受けられ、なかなか評価に困る映画なのは間違いない。

それでも、とにかく「ベルサイユのばら」という作品の凄みは十分に感じられる。ぜひ観てほしいし、ミュージカルを音響がバチバチに効いた映画館で楽しむべき映画なのは間違いなく、そこは自信を持ってオススメする。


まとめ

いまアニメ版が無料で配信されているので観ていますが、こちらも観ればかなり奥行きが出てきそうなので観てみることにします。
それぐらい引き込まれましたし、長く愛されている作品である理由はこの映画版で感じ取れたので、せっかくの機会なので味わい尽くしたいと思います。そういう意味でもきっかけを与えてくれた本作には感謝です。

ジェローデルも初回から出てるんですね!


最後に

白目といえば、永田裕志だ!!!

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ご拝読、ありがとうございました。


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