ホームホスピスはまだ 認知症とおかあさん
「はよう連れてって」
「行こう行こう どこか はやく」
と繰り返すおばあさん
声が大きい
ここではないどこかへ
しきりと行きたがる
よくよく聞いてると
「おかあさんいない おとおさんもいない どうしよう おにいさんもみんな死んだ どうしたらいい」
ということも話し出す
「ここには話するもんがおらん 連れがおらん 友達いない」
とも言う
大きな声でここではないどこかへ連れてってと繰り返すその内側には
親の不在が大きな不安となり揺らいでいる心があった
寂しい気持ちを抱えて大きな声で訴える姿があった
先日突然にわたしも母を亡くした
「わたしもおかあさんいない」
「死んだ?」
「死んだ」
「おんなじ どうしよう おとうさんは?」
「おとうさんも死んだ」
「おんなじ どうする どうしよ」
一瞬バチッと目が合いこの人と通じた瞬間
わかりあえた
お互い
こないだ死んだばかりだからあまりにタイムリー
わたしはでも「どうしよう」って嘆いていない
親の不在を悲嘆はするけれど不安ではない
親がなくても生きていけてる自分に気がつく
わたしは44歳で
身体も心もお金も生活も自分で何とかできていて
親がいなくても生きていけてる
そのことに気がついて改めて
育ててくれた両親に感謝する
これが自立ってやつで
突然の別れにむしろおそろしく前向きになって
後悔と感謝を今に向けて
自分の使命にアンテナ張ってる
ケアをしてたら本当に癒される
これが仕事なんだからわたし最高だ
ありがたい